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4
「あーあ。虎彦、さいてー」
鍵をかけたはずのドアがいとも簡単に開いて、双子の妹の顔が覗いた。
「うっせぇ。勝手に鍵開けてんじゃねぇよ」
「ふふん」
せせら笑いながら、ベッドの上で眠りこけている兄貴の顔をつついて遊んでいる。
「やめろ。起きるだろ」
このまま少し寝かせてやりたいんだから。
「あんたさ、お兄ちゃんにはほんと優しいよね!」
「黙れ、うっとしいぞ」
「まぁ、あたしも大概だけどね!ほら」
手を伸ばして俺の髪に触れる。
我ながらあまり似合わない。でも仕方ないだろう。俺は『おそろい』になりたかったんだから。
兄貴のサラサラな髪を撫でた。
今の俺たちと同じ、白に近い金色。
兄貴のは生まれつき。目の色も灰色混じりの青で綺麗だ。
色素がとても薄いとかだっけな。肌も道行く人々が振り返るほど白い。この姿形から今も色々と言われたりしているのは知っている。
「苦労してんのはあたし達家族が一番よく分かっているもんねぇ」
兎美がしみじみと言った風に呟いた。
「しかしあんたも馬鹿ね。お兄ちゃんとおそろいって子供みたい」
「てめぇもだろ」
「あたし?あたしはちょっと付き合ってあげただけ。二人だけおそろいなんて嫉妬しちゃう」
冗談めかしているが、まぁこいつも大概だな。
二人で兄貴の寝顔を眺める。
「さっさと、告白なり押し倒すなりすればぁ?意気地無しぃ」
「無茶言うなよ。実の弟に恋愛対象にされて平気な奴はいないだろ」
「だったらせいぜい頑張って意識させるか、同情でも誘うか、いっそ無理矢理………」
何考えてるんだ。この馬鹿。
俺は兎美の頭を小突いて部屋から追い出した。
再び二人きりになって、未だガキのような顔をして寝ている兄貴の傍に腰をかけた。
「ごめん」
馬鹿な弟で。という言葉を飲み込んで、唇にそっと口付けをした。
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