お小遣い

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お小遣い

「今月分はこれだけね」 お母さんがテーブルの上に並べた3枚の百円玉を、右手で一枚ずつつまんで左手に大事に包むお兄ちゃん。 いいなあ。 あたしもお小遣い欲しいなあ。 でもお母さんはまだ1年生のあたしにはお金を持たせてくれない。 あたしはそうっとお兄ちゃんに近づき、そろそろお兄ちゃんの背中に登る。 「お兄ちゃん、お金見せて」 お兄ちゃんは左手を開いててのひらの上の硬貨を見せてくれる。 ぴかぴか光る3枚のメダル。 「いいなあ、あたしも欲しいなあ」 呟くあたしにお兄ちゃんが言う。 「もう少し大きくなったら貰えるよ」 「もう少しって?」 唇を尖らして聞くあたしにお兄ちゃんは困った顔で答えてくれた。 「百日寝たらかな」 百日かあ、百日って言うのがどれくらい長いのか良く分からないけど、きっとずっと先なんだろうなあ。 「それまでは兄ちゃんがお小遣い分遊んでやるよ」 「どれくらい?」 「んー、3年生のお兄ちゃんのお小遣いが300円だから百円分かな」 百円分のお兄ちゃんの背中かあ。 あたしはお兄ちゃんの首に百円分しがみつく。
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