act.14

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act.14

<side-CHIHARU>  シノさんが、島津さんの店で買ったもの。  黒とチャコールグレイの無地と黒にシルバーのピンストライプが入った生地のシングルスーツが3着。  白のシャツが2枚、濃いグレイのシャツが1枚、濃いブルーのシャツが1枚、薄いブルーのストライプシャツが1枚。  シンプルな幾何学模様のネクタイ、赤系と青系の2本と黒の無地が1本。  黒の本革製のベルトが1本。  先がほっそりした黒の艶やかな革靴が1足。  黒・グレイ・濃紺の靴下が3足。  ユーズド風のジーンズが1本と色落ちを全くさせてない本藍染めのジーンズが1本。  シノさんの股下の長さにきちんとあわせたチノパン1本。  後ろがボックスカットになっているシンプルな形のカジュアルジャケットが一枚。  グレイのパーカー1枚。  ざっくりとした長めの袖のセーターが1枚。  白とビビッドなカラーのTシャツを色違いで3枚、上品なカットのタンクトップが白と黒一枚ずつ。  麻素材の、紐でウエストをしぼるタイプの白いアジアンテイストなズボンが1本と同じ形で青のグラデーションがランダムに流れる色染めのものが1本。   ── ようするに、シノさんがこれから生活していくのに必要最低限な洋服が、オン用・オフ用含めてすべて賄える計算だ。  ユーズド風ジーンズと麻製ズボンはゆったりとしたシルエットだったが、他は割とシノさんの身体のラインがわかる程度にフィットするサイズとカットのものばかりだった。  島津さんの的確な服の選び方には、僕も正直感心した。さすが美住さんの幼馴染みとでもいうのか。  特に、最終的に「今日はこれを着て帰れ」と美住さんに命令された漆黒色の細身のスーツは、シノさんの身体を凄くセクシーに見せた。  今度から僕もここで、スーツをオーダーしようかな、と本気で思う。  しかし当のシノさんは、「破産する・・・」とビビりまくっていた。   ── ま、確かにそうだよね。  僕は、シノさんと美住さんが格闘している間に、島津さんにお願いして、僕のクレジットカードで支払いを済ませた。  今度ばかりは、シノさんが貯金を崩して一括払いするのはキツ過ぎる。  それを知ったシノさんは、またも激しく抵抗したが、僕が「じゃぁ、シノさんをモチーフにして書く小説のモデル料先払いという捉え方にするか、来月から一万円ずつ僕に対するローンとして分割払いにするか、どちらの方法がいいですか?」と訊くと、シノさんは素直に月々一万円ローン返済を選んだ。  こうして選択肢を与えるようにすると、人ってどちらかを選ぼうとするんだよね。そのおかげで、最初の問題が見えなくなる場合だって多い。  シノさんも、僕のこの戦法ですっかり納得してくれた。  だが、美住さんの方の支払いがまだ残っていたので、僕達は一旦、美住さんのお店まで戻ることにした。  その帰りの道すがら。  シノさんのビフォア・アフターは、完璧な効果を発揮した。  三階のフィッティングルームから一階に下りた途端、店内がざわついた。  店にいた客や店員全員が、僕らを見た。  いや、正確にはシノさんを、だ。  男も女も関係ない。  それは、店の外に出ても同じだった。  僕はわざと歩調をゆっくりにして、シノさんと美住さんが歩いて行くのと少し距離をおきながら、変身したシノさんを後ろから眺めた。  街は休日ともあってそれなりの人出だったが、そんな中でも群衆から頭ひとつ出ているシノさんは目立った。  たくさんの荷物を両手で抱えたシノさんの背中は男らしく広くて、スーツの生地がパンと張っている感じが何ともセクシーだし、自分の変身ぶりをまだ自覚していない無頓着な表情が気取っていなくて自然で、艶のある身体付きとのギャップが激しい。  すれ違う女性が、老いも若きも皆、振り返って行く。  僕はその様を見て、内心複雑な心境だった。  思惑通りの展開に、「やった。ざまぁみろ。シノさんの姿の良さを最大限に引き出してやった」と誇りや昂りを感じる僕と、振り返る女共に嫉妬心を覚える僕。 ── まったく複雑な男心だ。  デフォルトに帰ると、ここでも反応は同じだった。  シノさんの変身ぶりに、スタッフ全員が「わぁ~」と声を上げた。 「や~、篠田さん、凄い変わった~!」  真美チャンが歓声を上げて、走り寄ってくる。 「そ、そうかな?」 「自分でそう思いません?」 「支払いのこととか考えてたら・・・。まだ冷静に受け止められない。庶民だから、俺」  シノさんがそう言うと、店内が笑いに包まれた。「その気持ちわかりますよ~」だなんて、店のシャンプーボーイがシノさんに声をかけている。「あら、アンタ達にもちゃんとお給料あげてるでしょ! 人聞きが悪い!!」だなんて、美住さんが口を尖らせている。  美住さんは、久々の会心作だから記録用に写真を撮らせてくれとデジタル一眼レフを取り出してきた。  シノさんは最初、「写真なんて無理」と断ろうとしていたけど、「アタシ、相当頑張ったんだから、それぐらいのご褒美くれてもいいでしょ」と美住さんが言うと、「そうですね。確かにそうだ」とシノさんは承諾した。  頑張った人を素直に認めるシノさんが素敵だ。  白い壁をバックにちょっとした撮影会が始まった。  カットされかけているお客さん達(ほとんどが女性だった)も、一旦中止してまで撮影会を見物していた。 「ほら、そんなに固くならないで! 顔が怖い!!」 「無理ですよ。そんな、モデルじゃないんだから・・・」 「しょうがないわねぇ。ちょっと! 澤くん!! ほら、そこでボサッと突っ立ってないで、面倒見なさいよ。篠田くんの保護者でしょ!」 「 ── 保護者って、なんですか?!」  シノさんが素っ頓狂な声を上げる。  どうせシノさんは、僕の方が年下だから、自分の方が保護者たるべきと思っているに違いない。へんにそういうところ、こだわりがあるんですよね。俺がしっかりしなくちゃいけないんだ、とか何とか。 「はいはい」  僕は、シノさんを一旦フレームアウトする位置まで押しやると、代わりに僕がカメラの前に立った。 「いいですか、シノさん。何もカメラのレンズを見なくてもいいんですよ。カメラは勝手にいい瞬間を切り取ってくれますから。ポケットに手を突っ込んだり腕組みしたりしながら、窓の外でもぼんやり眺めて、普通に立ってたらいいんです。こんな風に」  僕が雑誌撮影でいつも行っているように身体を構えると、おお~と店内がどよめいた。  美住さんが、「やっぱカッコいいわ、澤くん」と言って、シャッターを数回押す。 「ね、簡単でしょ」  僕は、シノさんと身体の位置を入れ替えた。  しかしどうしてもシノさんは、カメラをチラチラ見て、意識してしまう。 「シノさん、僕の方を見て」  僕は手を叩いて、シノさんの気を引いた。  シノさんが僕の方を見たのをとらえて、僕はすかさず、こう声をかける。 「夕べのタラコスパゲティ、うまくできましたよね」  シノさんの表情が、明るく緩む。 「ああ。あれは美味かったよ、凄く」  シノさんが僕と会話している間に、美住さんがシャッターを押していく。 「今度はいつ、栃木の方に行くんですか?」 「ええと・・・」  シノさんが、少し眉間に皺を寄せて、考え込む。  そこでまたシャッター。 「週明けの月曜日だな。ちょっと柿谷酒造にお願いしないといけないことがあるから・・・」  シノさんが、下唇のエッジを人差し指で擦りながら話す。  これはシノさんの考えながら話す時の癖だ。そこも絶好のシャッターチャンス。 「じゃ、その日は夕食、準備する必要ないですね」 「そうなるね。ごめん」  シノさんはすまなそうな表情を浮かべ、小首をかしげた。またシャッター音。 「オッケイ!!」  美住さんが大きな声でそう言って、僕の腰を軽く足で蹴り上げてきた。  僕の耳元で「さすが澤くんね」と呟く。 「え? もう撮ったんですか?」  シノさんは、きょとんとしている。  僕の後ろで女の子のスタッフ達が、「柴犬みたぁ~い。ギャップかわい~」とか囁き合っている。  ── う~ん・・・。  僕は思わず、右眉の下をカリカリと掻いた。  そんな僕に、美住さんが再び声をかけてきた。 「そうだ。記念に、二人一緒に撮ってあげる」 「は?」  僕は怪訝そうに美住さんを見た。  美住さんは逆に、「なんでそんな顔で俺を見る?」というような表情をしていた。 「写りたくないの?」  そう訊いてくる。  僕は言葉を濁らせた。 「いや、だって、シノさんが嫌がるんじゃ・・・」  僕がそう言うと、途端にシノさんが「なんで俺が嫌がるんだよ」と言い返してくる。 「一緒に撮ってもらえるってんなら、話は別だよ」  シノさんは僕の腕を掴むと物凄い力強さで僕の肩を抱き寄せ、まるで修学旅行の写真に写るみたいに晴れ晴れしい笑顔を浮かべ、Vサインをした。  僕がシノさんを見て、「えぇ~」と顔を歪ませているところを写真に撮られる。 「ちょっと、美住さん! ヘン顔撮らないでくださいよ!」  僕が叫ぶと、美住さんを初め、店内が笑いに包まれた。   ── 自分がこんな笑いの対象になるだなんて、初めての経験だ。どうしよう。対処の仕方がわからない。 「何だ、千春。顔が固いぞ。笑顔、笑顔」 「シノさんに言われたかないですよ」  ムスッとした顔をまた写真に撮られる。 「やだ~、拗ねてる澤さん、かわいい~」  どこからか声が上がって、また笑いが起こる。 「カワイイってよ、千春、よかったな」  さっきまで全然ビビってたシノさんが、今は余裕をかまして僕を見る。  その顔つきが、僕の負けず嫌いさ加減を刺激したんだ。 「言っときますけど、シノさん。僕が本気出したら、シノさん、泣きますよ」 「え? 泣くって?」  目を見開くシノさんの背後に周り、僕はシノさんを羽交い締めにした。いわゆるコブラツイストだ。 「わぁ────!! ちょっと!!!」 「 ── 痛がれ・・・!!」  僕はありったけの腕力で、シノさんの身体をギリギリと締め上げた。  意外にも僕はこう見えて、プロレス技のいくつかを体得している。プロレス技って、ダイレクトに相手を苦しめられる感覚があるから、いいんだよね。 「いてててててっ!! 痛い、痛い、痛い!! 本気で痛い!!」  シノさんが悲鳴を上げる。  美住さんは、「まるっきり子どもねぇ、あんた達」と爆笑しながらシャッターを切った。 「ホント、ちょっと・・・!! もうやめて!!」 「じゃ、先生って呼べ。崇拝してます、大先生って言え」 「すっ、崇拝してます、大先生!!」  シノさんは超絶早口でそう叫んだ。  僕は、あっさりシノさんを解放する。  シノさんは床に四つん這いになって倒れ込むと、ゼイゼイと肩で息をしながら、「ハ、ハハハハハ」と力のない笑い声で笑った。「ひど過ぎる・・・」なんて呟いている。  一方、誇らしげな顔つきの僕を見て、美住さんが「澤くん、最強やね」と変に訛ったイントネーションでそう言った。  美住さん、田舎どこだっけ?  僕がシノさんの腕を掴んで引き上げると、シノさんは腰を押さえながらよろよろと立ち上がった。 「さ、早くちゃんと並びなさいよ」  美住さんに促され、二人並んで立った。  今度は、きちんと。  僕はシノさんに「両手をポケットに突っ込んだら、楽にポーズがとれますよ」と耳打ちする。  僕がシノさんの耳元に急接近したことに萌えたんだかどうなんだか、女の子達の間から「キャー」と黄色い悲鳴が上がる。  シノさんはコブラツイストの効果もあってか、すっかり脱力した様子でポケットに両手を突っ込むと、自然な感じでカメラを見た。  僕もそれにあわせてカメラを見る。  店内がさっきまでとは対照的にシンと静まり返ったところに、小気味よくシャッター音が重なった。  美住さんが今撮った写真をカメラの背面についた画面で確認する。 「なに、この神ビジュアル」  美住さんが呟く。 「どれどれ」  僕とシノさんが美住さんの後ろから画面を覗き込んだ。  うん、なかなか気怠い感じで格好よく撮れてる。 「あんたら、揃ってモデル始めたら」 「だから、モデルなんて絶対無理ですって」  シノさんが苦笑いする。  でも、シノさんも画面の中の自分を見て、満更悪くないって思っているようだった。  これがシノさんのコンプレックス解消につながればいいけど。      <side-SHINO>  美住さんの店を出た後、俺達は遅い昼食を食べに行くことにした。  時間はもう四時過ぎていて、このままいくと夕食の勢いだ。  時間が中途半端だったものだから、レストランは軒並みまだ開いていなくて、軽食がとれるカフェに入った。  なんせ荷物が多かったので、店に入るなり、店内にいた人達から一斉に視線を浴びてしまった。  取り敢えずテーブル席に荷物を置いて座ると、思わず口から「あ~、腹が減った」と声が出た。千春も「そうですね」と苦笑いする。 「僕もまさか、島津さんの店にまで行くとは、予想外でしたからね」  店の人がオーダーを取りにくる。  何せ腹が減っていたから、中途半端な時間でも食べられる『本日のサンドイッチ』からサラダ、スープ、マフィン、キッシュを手当たり次第に頼んだ。  店内は、道路に面したところがすべて大きなガラスになっていて、休日の表参道に向かう人達がたくさん歩いているのが見える。  こんな日にこうして街に出ることは全くなかったから、人々の華やかさに少々疲れてしまった。 「シノさん、大丈夫?」  疲れが顔に出ていたのか、千春がコーヒーを啜りながら訊いてくる。  俺はテレ臭くなって、少し笑った。 「こういうの慣れないからさ。でも大丈夫」 「シノさん、いつも大丈夫って言うからな。たまには、弱音吐いた方がいいですよ」 「そんなのお互い様だろ?」  そう言ってコーヒーを飲む。  俺はちょっと顔を顰めた。 「これなら、千春の淹れるコーヒーの方が美味いな」  俺がそう言うと、千春はニヤリと笑った。 「ちょっと、店の人に聞こえますよ。 ── ここのコーヒーはオーガニックだからこういう味になるんです。身体にいいんですよ」  ふ~ん。そんなものか。  俺が神妙な顔をしてコーヒーを啜っていると、千春が身を乗り出してきて、俺に耳打ちをする。 「 ── で? 女の人達に羨望の眼差しで見られる感想はどうです?」  俺は間近に迫る千春の顔をマジマジと見た。 「え? どういうこと?」  俺がそう言うと、千春はがっくりと項垂れた。 「シノさん、気づいてないの?」 「だから、何が」  俺はふいに千春に両手で頭を掴まれると、無理矢理周囲に頭を向けられた。  こちらを見ていた女性客達がクスクスと笑いながら、俺から咄嗟に視線を外す。 「え? 千春のこと見てたんじゃないのか? 彼女達」  そう言うと、軽くデコピンされた。 「イテ」  俺が両手で額を押さえると、千春はハァと溜息を吐く。 「違いますよ。彼女達はシノさんを見てるんですよ。なんでわかんないかな」  千春がそう言った時、女性店員が料理を運んできた。  テーブルに皿を並べる店員に、千春が「ねぇ、この人、かなりカッコいいよね」と俺を指差す。  俺は顔がカッと熱くなった。 「なっ! お前、なに面と向かって訊いてんだよ!」 「だって、認めないのはそっちでしょ」 「認めてない訳じゃないって」 「僕がこんなにあれこれ策を練って変身させたのに、全然ありがたみに気づかないんじゃなぁ」 「そんなことないよ」  俺達の言い合いに、店員さんもおろおろしている。  腕組みした千春が、店員さんを見上げた。 「で、どう思います? 実際」  店員さんが俺を見る。 「・・・カッコいいと、思いますけど」 「男前だよね」 「ええ、そうですね」 「僕より、いい男でしょ」  店員さんが千春を見て、俺を見る。 「・・・・」  店員さんが押し黙ったのを見て、俺は「ほらぁ!」と千春を指差した。 「俺じゃないんだよ。千春なんだよ」 「 ── 人は好みというものがありますからねぇ・・・」  千春は、すました顔をして明後日の方向に視線をやる。  さすがの店員さんも吹き出していた。  その彼女が言う。 「あの・・・、ようは、お二人とも凄く目立つから、皆さんが見られるのだと思いますよ」  俺は店員さんを見た。 「 ── 目立つ?」  俺は自分を指差す。  店員さんは頷いた。 「凄く背が高いですし。モデルさんみたいだから」 「またまたぁ」  俺は笑いながら、上目遣いで店員さんを見た。  千春が、俺の目元を手で覆う。 「あ、その目、やめた方がいい。ホント、公害だからそれ」 「なっ、なんだよ! 公害だなんて人聞きが悪い!」  俺が叫ぶと、店員さんがついに声を上げて笑った。 <side-CHIHARU>  シノさんのね、八重歯を覗かせた上での上目遣いは、キラーパスなんですよ。  僕も何度、その目に陥落させられてきたことか。  これ以上ここで、愛嬌を振りまく必要はありません。  まったく、こんなにも徹底したKYぶりを発揮されると、逆に尊敬してしまう。  これじゃ、『空気読めない』どころか、『空気わからない』の方が相応しい。  彼女達の視線に気づかないなんて、どこまで鈍感なんだ、この人!  取り合えず店員にお礼を言って食事を始めると、途端にシノさんは静かになった。シノさん、集中して食べる質だから。  ああ、もう。よく噛まずに丸呑みしてるような感じ、ホント柴犬みたい。 「よく噛んで食べましょうよ」  僕が言うと、口をモゴモゴと膨らませたまま、僕を見る。  そのクリクリとしたお目め。  ホント、やめてもらいたい。  シノさんはゴクリと口の中のものを飲み込むと、「千春、なんだかお袋を思い出す」と言った。その後、ハッと気づいたように「あ、だから保護者か」と呟いた。 「アハハハハハ! やっと言われた意味が分かった」  だなんて笑っている。  シノさんの高笑い。  もう、なんだってんだろう、この人。  シノさんの高笑いも、いわゆるキラーパスなんだな。  ああ、この場でモミクチャにしてやりたい。  僕はゴホンと咳払いをして、なんとか平静を装うと、コーヒーを啜った。  「シノさん、ここを出たら、一旦その荷物を駅のロッカーにでも預けて、クラブに行きましょう」 「クラブ?」 「シノさんがそんなに鈍感なら、もっと露骨にモテ感が味わえるクラブに行けば、いやでも分かるでしょ」 「・・・うん」  若干不安そうにシノさんが返事する。 「大丈夫ですよ。いきなり襲われることはないですから」  僕はそう言うと、シノさんが食べ終わったのを確認して、席を立った。
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