act.26

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act.26

<side-CHIHARU>  シノさんの手を握って、寝室に誘った。  部屋の造りでいうと、その部屋はシノさんも寝室に当てている部屋だったが、僕の場合は、セミダブルのベッドとサイドボードしか置いてあるものがないような部屋だったので、シノさんの部屋とは随分様子が違っている。  何度も僕の部屋に来ているシノさんも、この部屋に入るのは初めてだった。 「わぁ、凄く広く見える」 「シノさんちはモノを凄く置き過ぎなんですよ」  そう言いながら僕は、後ろからシノさんを抱き締めた。  首筋に顔を埋め、シノさんの香りを吸い込む。  ああ、シノさんの匂いだ。 「千春・・・」  振り返るシノさんを少し解放して、でもすぐにまたシノさんの身体に手をかけ、キスをする。  今度は、舌でシノさんの唇をなぞった。  シノさんが戸惑った隙に、舌をシノさんの中に差し込む。 「ん・・・」  シノさんが鼻を鳴らす。  シノさん、呼吸が止まってる。鼻で息して。  僕が早めにシノさんを解放すると、ハァハァと彼は荒っぽく呼吸をした。 「シノさん、もう一度・・・」  今度は僕が少し舌を出すと、シノさんも少し舌を覗かせて、唇が絡み合う前に互いの舌が触れ合った。   ── ああ、僕ってこんなに、キスが好きな人種だったっけ?  僕の舌が逃げて、追いかけてきたシノさんの舌を、僕の唇で挟んで。 「・・・んん・・・」  シノさんが、鼻を鳴らす。  ああ、凄くセクシーだよ、シノさん。  シノさんと、こんなキスができる日が来るなんて。  しかも、キスだけじゃない。  この手にシノさんを抱ける日が来るなんて。  僕の心臓は高鳴り続けて、このまま止まってしまうんじゃないかと思うくらい。  でも、そうなったとしても僕は、後悔しない。  シノさんを抱けて死ねたら、本望だ。  僕は、シノさんのジャケットを脱がせてから、シノさんをベッドに横たえた。  シノさんのシャツのボタンに手をかける。  シノさんは、どうしていいか分からないような表情を浮かべ、唇を噛み締めた。  シノさん、切羽詰まってくると、唇をよく噛むんだな・・・。  シャツの合わせ目の間から、シノさんの肌が現れる。  厚い胸板。薄く色づく乳首。腹筋から腰につながる筋肉の筋。  僕がその筋を指で辿ると、シノさんのお腹がヒクリと震えた。  僕はそのままベルトに手をかける。  シノさんが少し不安そうな顔をしたので、またキスをしながらベルトを抜き、ジーンズのファスナーを降ろした。  僕の手の甲に当たるシノさんのソコは少し興奮していて、なぜだか僕は、鼻の奥がツンとなる。  涙は出なかったけど、気持ちではもう泣いていたのかもしれない。  だって、シノさんが僕のキスで興奮してくれてるなんて、感動以上の何ものもでもない。  僕が身体を起こしてジーンズを引き抜こうとすると、シノさんも腰を上げて協力してくれた。   ── へぇ、シノさん、トランクスやめてボクサータイプの下着にしたんだ。うん、いいね。そっちの方がカッコいい。  僕が微笑んだのとは裏腹に、シノさんは自分の下着を見て、「うわっ! ちょっ!」と叫んで、股間を手で隠した。  理由は分かってる。  白い下着の前が既にちょっと濡れてて、少し透けてたからだ。  シノさんは顔を更に真っ赤にして、ギュッと目をつぶった。 「シノさん」  僕が声をかけると、シノさんは蚊の鳴くような声で「恥ずかし過ぎる」と呟いた。  僕は間髪入れず、「恥ずかしくなんかない」と断言した。 「恥ずかしくなんかないよ、シノさん」  耳元に口を寄せ、僕はそこにキスをする。  シノさんはブルリと身体を振るわせながらも、間近で僕を見つめてきた。 「恥ずかしいだろ、やっぱり・・・」  僕は首を横に振った。 「ううん。シノさんは濡れやすいだけだよ」 「ぬっ、濡れやすいって・・・」  シノさんは顔を顰めながら、明後日の方向を見やる。  僕は思わず微笑んだ。 「なに? 嫌だった? 言い方が」 「エロいだろ、それ」 「フフフ」  僕は、股間を隠しているシノさんの手の上から僕の手を押し付け、強めにそこを揺さぶった。 「あっ!」  シノさんの手が一瞬緩む。  その隙に僕はシノさんの手と下着の間に手を差し入れ、擦った。 「・・・んっ・・・」  シノさんが足を曲げ、少し身体を引く。 「感じた? また濡れてきましたね」 「いやぁ、ちょっと、マジで恥ずかしいよ・・・、こんなの・・・」  この期に及んでまだエッチなモードにならないところが固いというか、青いというか。  初めての子を相手にしてるって実感をしてしまう。  僕は、シノさんの身体の両脇に膝をつき、片手でシノさんの手を掴み、片手で僕のジーンズのボタンを外すとそこを緩めて、シノさんの手を僕の下着の中に引き入れた。  シノさんが驚いた顔をする。  僕はシノさんをジッと見つめた。 「 ── 僕のも、濡れてる?」  シノさんは驚いた顔つきのまま、コクコクと頷いた。  僕は、微笑む。 「じゃ、同じだ。僕は、普段あんまり先走りを出さない方なんだけど。シノさんが相手だからかな。もう濡れてるなんて」  僕は、ハァと熱い息を吐き出す。  シノさんの手がソコに触れてるだけで、僕はどんどん勃起してしまう。  僕の方が恥ずかしいよ、シノさん。こんなに、余裕がないなんて。 「な、なんか変な感じだ」  シノさんが呟く。 「ん? 濡れてるのが?」 「いや、そうじゃなくて、なんというか・・・」 「他の男のモノを触ってるのが?」  シノさんが頷く。 「意外に、自分のと質感が違うっていうのかな・・・」 「そうですね。どれを取ってしても同じということはないですね。似てるっていうのはあるけど」 「そうなの?」 「ええ。僕の経験の範囲内で言えば」  僕はシノさんの手を解放すると、すべての服を脱ぐ。  シノさんが下から僕を見上げたまま、溜息をついた。 「本物の方が、ずっとキレイだ・・・」 「そう? シノさんにそう言ってもらえて、純粋に嬉しい」  僕は素直に笑った。  まさか自分が、自分の容姿を褒められて素直に喜ぶ日が来るなんて、思いもしなかった。  僕はいつも天の邪鬼で、即物的なセックスをしてきた連中からいくらそう言われても、いつも反感すら感じていたのに、シノさんに言われると、僕も満更じゃないって思えるんだ。  僕は、僕に見惚れてくれているシノさんの隙をついて、彼の下着を取り去った。  プルンと下着の先からシノさんの半起ちになったペニスが顔を覗かせる。  さすがに初めてなだけあって、そこはピンク色で。こう言ってはなんだが、凄くキレイだった。  シノさんが反射的にまた股間を手で隠して、顔を赤くする。 「なに? まだ恥ずかしい?」 「うん・・・。銭湯で脱ぐのとは、訳が違うからさ」 「うん」  微笑みが止まらない。  シノさんが可愛くて。  僕は、少し強引にまた手を差し込むと、シノさんのペニスを優しく扱いた。  耳元で囁く。 「ねぇ、シノさん。優しい方が好き? それとも激しい方?」  シノさんは、顔を両腕で覆ってしまう。 「分かんねぇよ、そんなの・・・」 「自分ではどうしてるんですか?」  僕がそう訊くと、腕の合間から責めるように僕を見た。 「 ── バッ・・・! 言うわけないだろ!」 「言うわけないか」  僕はペロリと舌を出す。  僕がフフフ、ハハハと笑い続けると、次第にシノさんの身体から力が抜けて、シノさんも笑い始めた。  二人で微笑み合って、キスをする。  甘い、甘いキスだ。  僕はそのまま、唇を首筋に滑らせた。  シノさんの身体がピクリと跳ねる。  鎖骨を舌でなぞり、胸板の真ん中を指で辿り、乳首に触れる。 「ハァ・・・っん・・・んん・・」  乳首を親指で転がすと、シノさんが身をよじった。  チラリとシノさんの顔を見ると、顔を横に向け、苦しそうに眉間に皺を寄せていた。案の定、唇を噛み締めている。 「シノさん、ダメだよ。唇、噛まないで」 「・・・ん?・・・」  シノさんが僕を見る。 「唇。噛み締めないで。切れるから。声、出していいんですよ」  僕がそう言いながら、乳首を指の腹で擦り合わせると、シノさんが一瞬目を閉じて顔を顰めた。ピクリピクリと身体が跳ねる。 「だって・・・。男がそんな声出すなんて・・・。変じゃないか?」 「変じゃないですよ。僕だって、出るもの」 「千春も?」 「そりゃ、気持ちよければ、誰だってそうですよ。女の子だって、声出してもらった方が燃えるっていうの、聞いたことあるし」 「ええ? 本当に?」 「自分の愛撫で感じてくれてるのが分かるんだから、そりゃ嬉しいでしょ。きっと皆同じですよ」 「そうかなぁ・・・」 「そういうものです。だから、唇、噛まないで。声出すの、ちっとも恥ずかしくないから。むしろ当たり前なんだから」  僕がそう断言すると、やっとシノさんも納得したようだ。  僕が、シノさんの乳首を口で愛撫すると、「ぁあっ・・・」と小さく声を上げた。  男らしい、ちょっと低めの喘ぎ声。   ── 本当に、たまらない。たまらなくセクシーだよ、シノさん・・・。  僕は、シノさんの『イイところ』がどこか、必死に探る。  シノさんは初めてだから多分鈍いと思うけど、それでもどこかあるはずだ。  腹筋を舌で辿って、指で脇腹を撫でて。時折キュッと肌を吸った。  その度にシノさんの身体が跳ね、「アッ、ハァ・・ハァ・・・」と苦しげに息をする。  多分きっと、明日シノさんの身体はキスマークだらけになると思うけど、これは初めてシノさんと肌を合わせる僕の特権として許してもらう。  震えながら涙をこぼしているペニスはそのままにしておいて、シノさんの膝の裏に手を差し込んで、左の太ももを少し上げさせる。  白い内股。  充分厚みのある逞しい太ももだ。  見るからに、おいしそうな。  僕はかぶりつきたくなる衝動にかられたが、それじゃ人食いハンニバルになってしまうので、少しだけ歯を立てた。 「ウ、あぁッ!! あハ・・・!!」  シノさんの腰が捩れる。  ここ、シノさんのイイとこなのかも。  僕は、きつめに肌に吸い付いた。 「・・・はッ・・・あっ、あっ」  ちょっと視線を上げると、シノさんのペニスがピクリと跳ねて、とぷっと新たな先走りがこぼれた。  ここ、シノさんのイイところ決定。  僕は記録を残すように、二回、キスマークをつける。  反対側も同じようにしてみたが、どうやら右の方が感じるようだ。  その後、シノさんの脛から足先に至るまで、僕はシノさんを愛撫した。  シノさんは脚とか腕の毛は男としてむしろ薄い方ではあったが、両脇と股間は割と濃くて黒々としてる。  なんだかそういうのも、やたらセクシーというか・・・『エロく』見えて、僕のアソコは愛撫もされていないのに、完全に勃起していた。痛いぐらいだ。僕の呼吸も完全に上がってしまってる。「はぁ、はぁ」と荒い息を吐くのがシノさんなのか、僕なのか、もはや区別がつかない。  僕は、いよいよシノさんのペニスを口に含む。 「・・・ん・・・」  シノさんの味がして、僕は少し鼻を鳴らした。  シノさんの身体が感じてぐっと二つ折りになるところを、僕はありったけの腕力で押さえ込む。 「ハッ・・・ハッ・・・マ、マジか・・・」  シノさんが眉間に皺を寄せ、切ない表情で僕を見る。  僕はシノさんのペニスを掴んだまま、顔を上げると「マジですよ」と答えた。  シノさんの体液に濡れた僕の唇をぺろりと舐めると、シノさんが目を細めた。 「平気なの?」 「むしろ好きですが。 ── 一般人はこういうこと、しないと思ってた?」  シノさんは頷く。 「そんなのしてるのは、AV業界だけかと思ってた」 「してると思いますよ。好きな子はね」 「信じられない・・・」 「AVみたいにしてほしい?」  僕は小首を傾げて、シノさんを見る。 「え?」  シノさんが躊躇うのを見て、僕はわざと恥ずかしい音を立ててシノさんのペニスを舐めた。 「ちょっ、ヤバいよ! マジ、ダメ、ダメ。勘弁・・・」  シノさんが、僕の頭を掴んで、引き離そうとする。  僕は顔を顰めて、「なに?」とシノさんを見た。  シノさんは胸を喘がせて、唾を飲み込む。 「そんなにされると・・・。これ、早いよ、マズい・・・」 「いいじゃないですか。気持ちいいんなら、そのままイッちゃえば」 「いくらなんでも早過ぎるだろ? 男の沽券に関わる」 「股間?」 「沽券!!」  さすがのシノさんも、そう言って吹き出した。  また二人で笑い合う。  こんなに笑いながらセックスするの、初めてだ、僕。  僕はシノさんを見つめながら、シノさんのペニスの先端を親指で優しくグルグルと撫でた。 「アッ・・・、ホント、ちょっと・・・」 「いいよ。イッちゃいなよ」 「いい年して、早いって・・・」 「いいじゃないですか。シノさんが若いってことですよ」 「何言ってんだよ・・・ッ、俺、三十路過ぎたオッサンだぞ・・・! ンッ、んん・・・っ、ぁはっ・・・あぁ・・・」  シノさんが首を反り返らせる。  凄くキレイだよ、シノさん。僕なんかより、ずっとキレイだ。 「きもちい?」  僕が訊くと、シノさんは素直にウンウンと頷いてくれた。  ああ、カワイイ・・・。  僕はまた、シノさんのソコにむしゃぶりついた。本当に『むしゃぶりつく』という表現が相応しいぐらい、激しく。 「あっ! アァあ!! ちはるッッ!」  シノさんの声が、甲高くなる。  今度は、離す気はさらさらなかった。  シノさんの手が、僕の髪をかき乱す。  抵抗しても無駄だよ、シノさん。今度は、確実にイッてもらうから。 「あっ、あっ、あ・・・っ・・・んっあぁ!!」  ビクビクと、シノさんのモノが僕の口の中で跳ねる。 「 ── ん・・・っ」  僕はシノさんのザーメンを口で受け止め、ゴクリと飲み込んだ。  本当に久しぶりに、男の出したものを飲む。  独特の青臭くて苦い味・・・これがシノさんの味。  僕がシノさんのペニスから口を離すと、シノさんのペニスの先と僕の唇の間に、細い糸が伸びた。  我ながら、そのエロい光景にゾクゾクしてしまう。  この光景を思い浮かべる度に、それだけで何度も自慰できそうだ。  シノさんは固く目を閉じ、ハァハァと胸を喘がせている。 「シノさん、大丈夫?」  シノさんの乱れた前髪を指で掻き上げてあげると、シノさんがゆっくりと瞼を開く。  そして僕を見るなり、また顔を真っ赤にした。 「どうしたの?」  僕が首を傾げると、「千春・・・、唇の横についてる・・・」と小さく呟いた。 「え? ああ」  指で拭うと、飲み損ねたシノさんの体液がついていた。  僕は指についたそれを、ゆっくり舐める。 「わ~~~~!!」  シノさんが身体を起こして、俺の手を口から外そうとする。  僕は、そのシノさんの指を今度は舐めた。 「千春!!」  僕は怯まない。  中指の先、指の股、人差し指。そのままそれを口に含んで、ペニスを吸うように、指を吸う。 「 ── 千春・・・、これじゃ、刺激、強過ぎるよ・・・」  僕は上目遣いでシノさんを見る。そして耳打ちした。 「シノさんの、もうとっくの昔に飲み込んじゃいましたよ。だから舐めるのなんて、今更です」 「え? の、飲んだの?」  シノさんが、間近で僕を見つめる。僕は、肩を竦めた。 「だって、シーツ、汚れてないでしょ?」  シノさんは確認するように、自分が座る周辺のシーツを触った。 「ほ、ホントだ・・・・」  シノさんはまた顔を赤らめる。 「ね、それより・・・」  僕はシノさんの身体にぴったりと寄り添い、後ろからシノさんの肩に顎をのせて、シノさんの股間に視線を落とすと、やんわりとそこを撫でた。 「シノさん、ここ、まだ元気だね。 ── 入れたい?」  間近でシノさんの目が大きく見開かれる。 「え? い、いいの? 千春って、女役の方が好きなのか?」  僕はシノさんの肩に顎をのせたまま、「う~ん」と唸る。 「ホント言うと僕は、どちらかといえばタチの方が好きなんですけど」 「タチ? ・・・ああ、男役のことか」 「そうです」 「でも、だったら・・・・。いいの?」  シノさんが不安げに僕を見る。  僕は身体を起こして、シノさんの肩に軽く口づけた。 「だって、ここまできたら最後までしたいでしょ、セックス。お互いに」 「でもさ・・・。無理強いは嫌だよ」 「無理強いなんかじゃないって。僕がシノさんを欲しいんだ。でも、シノさんは初めてだし、痛い思いはさせたくないから。人って、最初のセックスでその後のセックスライフが決まるっていいますからね。だから、シノさんにはなるだけ気持ちよくなってほしい。 ── 突っ込みたいでしょ? 男として」  僕があっさりとした口調でそう訊くと、シノさんもこめかみを掻きながら「そりゃ、まぁ」と答える。 「だから、いいんです。それで。それに・・・」  僕はシノさんの濡れたペニスを握る。 「コレを使わないと、童貞失った事にはならないんだし」  数回扱くと、挿入するのに困らないぐらいの固さにすぐ復活した。 「目をつぶってれば、女の人としてるのとほとんど変わらないそうですよ。男としてるって、意識しなくて済むって」  僕がそう言うと、シノさんはムッとした顔をした。 「そんな。そういう意味で目を瞑ったりなんかしない。俺は今、千春としてるんだし。初体験をそんな風に誤摩化したくない、俺」  僕はマジマジとシノさんを見た。   ── ホントに、この人ったら・・・。  僕は苦笑を浮かべた後、シノさんにキスをする。  今度は積極的に、シノさんもキスを返してくれる。  僕は身体をサイドボードの方にずらすと、引き出しを探ってコンドームの袋を取り出した。  キスをしている間に薄目を開けて、ゴムを袋から取り出し、シノさんのペニスに被せた。  シノさんが、ゴムの感触に驚いて身体を離す。 「え? ・・・使うの? これ」 「いや?」 「いやっていうか・・・必要なのかなって」  僕はシノさんの身体に小さなキスを降らせながら、「中でそのまま出すと、後が大変なんで。それに感染症の問題もあるし」と説明した。  それを聞いたシノさんが、「そ、そうだよな。俺が変な病気持ってたら・・・」とかって言う。  僕は笑った。 「そうじゃありませんよ。シノさんは初めてなんだから、絶対に病気は持ってません。僕がシノさんにうつしたらいけないってことです」 「 ── え・・・。千春、そうなの?」  僕は肩を竦めた。 「一週間ぐらい前にした検査はクリアでしたけど。それから以後セックスしてないから、多分大丈夫だと思いますが。それ以外にも、入れる場所が場所なんで、ばい菌がシノさんに入ることもあるから」  今度はシノさんが、マジマジと僕を見る。 「ん? なんです?」 「千春って、優しいんだな」 「もう、何言ってんですか。エチケットですよ、こんなの」  僕はシノさんの額を指で押した。  そしてサイドボードからセックスローションのチューブを取り出すと、シノさんの手に握らせた。 「ねぇ、シノさん、お願いがあるんだけど・・・」  耳元で熱く囁く。 「・・・なに?」 「これをシノさんのアソコに塗って、滑りがよくなるまで自分でソコを可愛がっててくれる?」 「え?」  シノさんの頬がまた熱くなる。 「僕は僕で、準備があるから・・・。ねぇ、僕のこと考えて、オナニーしててよ、僕のベッドの上で」 「千春・・・」   ── フフフ、その顔。また絶対、エロいって思ってるよね。  僕は、シノさんを微笑ましく思うその気持ちを顔に出さず、あくまでセクシーな表情のまま、シノさんの鼻筋を指で辿ると、「でも独りで勝手にイッちゃダメだよ。後で僕のこと、うんと可愛がってくれなきゃ・・・」と囁く。  シノさんの喉がゴクリと鳴った。   ── あぁ、カワイイなぁ、ホント。  僕はシノさんを置いて、寝室を出た。  まさか今夜、こんな展開になるとは思ってなかったから。  男同士がセックスするには、それなりに準備をしなくちゃならない。  はっきりいってこの時間って本当にシラケるだけだから、互いにそうならないように、なるだけ事前に準備を済ませるのがムードを壊さずにセックスを楽しむ秘訣だけど、今日みたいに突然となると、そうもいかない。  僕は、バスルームに入ってシャワーのヘッドを外すと、コックを捻る。  後はひたすら我慢してソコを洗う訳だけど、今夜の僕はちょっとそれにも感じてしまって。  だって、もう少ししたら、ここに僕はシノさんのペニスを迎え入れる訳で。  この中を今お湯が入ってくるように、シノさんのが突き入れられるってことで。 「 ── あぁ・・・」  僕はタイルに手をついて、思わず身体をブルリと震わせた。  ヤバい。  僕、ネコ向きの性格全然してないのに、こんなに興奮してる。  シノさん、僕のこと考えてオナニーしてくれてるかな・・・・。  シノさんのその姿を思い浮かべるだけで、もうイキそうだ。  すっかりキレイになったのを確認して、僕は寝室に取って返した。  そっとドアを開ける。  シノさんはベッドに寝転んでいた。  こちらから見ると、左の太ももからお尻が見えて、その向こうにシノさんのぼんやりとした顔が見える。  でもその目尻はピンクに染まってて、左腕の先は股間の陰に消えていた。  時折、切なそうに瞳を閉じる。   ── ああ、かわいらしいし、いやらしい。  僕は部屋に入ると、シノさんのお尻にキスを落とした。  シノさんは、はぁと吐息をついて、潤んだ目で僕を見上げ、「千春・・・」と囁く。   ── ごめんね、待たせちゃったね。 「シノさん・・・入れてい?」  シノさんの小鼻に僕の小鼻を擦り付けながら、僕は甘えるように言った。 「う、うん・・・」  シノさんが頷く。でもとても緊張してる声。 「大丈夫、そんなに緊張しないで・・・」  僕は自分のソコにもローションを塗り込んで、少し解した。  シノさんを仰向けして、シノさんの腰を跨ぎ、僕のその部分にシノさんの先端を押し付ける。  お湯でソコはだいぶ緩んでいるはずだから、切れないと思うけど。  僕はゆっくりとシノさんの身体の上に腰を落としていく。 「ハッ・・・アッ・・・、んん・・・。あっ、はぁ・・・・。シノさん・・・、入った・・・」  ヤバい。  シノさんの、大きい。  僕の中、シノさんでいっぱいだ・・・。 「痛くない?」  シノさんが心配そうに僕を見上げる。  僕は思わずシノさんの胸に縋り付きながら、「大丈夫」と呟いた。   ── 本当は結構痛かったけど、それは絶対にシノさんには言わない。 「・・・シノさんの・・・硬い・・・」 「う、うん・・・。千春は、凄く熱いよ・・・」 「シノさんの方こそ・・・、痛くない?」  僕がこれほどパツパツになってるのなら、シノさんだってかなりキツいはずだ。  シノさんは苦笑いしながら「ちょっと痛い・・・かな。でも千春に包まれてる感じがして、凄く、興奮してる・・・」と言った。 「独りでするより、いい?」 「そんなの、比べものにならないよ。人と繋がるのって・・・なんか酷く感動的だ・・・。 ── ごめん、俺、頭がどうにかなって、おかしなこと言ってる・・・」  緩く首を振るシノさん。  僕はシノさんのこめかみにキスをした。  シノさん、僕だってシノさんと繋がって、凄く感動してる。シノさんだけじゃないよ・・・。 「ハァハァ・・・。シノさん、動いていい?」 「動けるの?」 「動きたい」 「ああ」  僕は身体を起こすと、腰を前後に揺らした。 「アッ、アァ・・・!」  二人同時に喘ぎ声が出る。 「ち、千春・・・!」 「なに・・・? シノさん・・・」 「これ、全然もたない・・・!」 「ん」 「あっ、あァ・・・。だ、ダメだ、腰が勝手に動きそう」  眉間に皺を寄せ、厳しい顔つきをするシノさんは最高にエロいよ。とてもセクシーだ。 「いいよ・・・、動いて・・・」 「きつくない? 大丈夫?」  僕は首を横に振る。 「ううん・・・・。欲しい・・・。下から、突いて・・・」  シノさんが苦笑いした。 「だから、そういうの、やたらエロいんだって・・・」  二人で顔を見合わせて、フフフと微笑み合う。  シノさんが、ぐいっと下から腰を突き出した。  奥まで突かれる形になって、僕は思わず「あぁ!」と声を上げる。  僕は両手をシノさんの胸に置いて、下からの突き上げをひたすら受けた。 「シノさんっ・・・・! あぁ、上手だよ・・・。とても上手・・・」 「気持ちいい? 感じてる?」  僕はコクコクと頷いた。   ── 本当に自分でも意外だ。正直ネコってあんまりいいもんじゃないって思ってたんだけど。  シノさんのモノが僕の身体の奥を突き上げる度、僕は正気を失いそうになる。 「あぁ・・、シノさん・・・」  僕もシノさんの動きに合わせて腰を揺らす。  刺激が強すぎるのか、シノさんがギュッと目を瞑った。 「あァっ、はっ、千春・・・、も、もう・・・」 「 ── ダメ?」  シノさんが、コクコクと頷く。 「ごめん!」 「いいよ・・・。いつでもきて・・・」 「でも、だって、千春・・・!」  涙目のシノさん。僕はシノさんに口づける。 「大丈夫だから・・・。僕もイキそうだから・・・」  僕がそう囁くと、シノさんの身体がビクンと跳ねた。 「ハッ・・・・・・っっっ! あっ、うんぅ!!」  僕の中で、シノさんのモノがビクビクと震えているのが分かる。  僕は、浮き上がったシノさんの背に腕をまわして、抱き締めた。  腕の中でブルブルと震えるシノさんの髪を、僕は何度も優しく撫でる。 「 ── まだ、出てる?」  僕が訊くと、シノさんは歯を食いしばって、頷いた。  最後に二回、シノさんの身体が跳ねて、僕の身体を揺らした。  僕は、汗塗れのシノさんの額にキスを落とす。  シノさんは、熱に浮かされたかのようなとろりとした顔つきで、僕を見上げた。  気怠い手の動きで、僕の頬を撫でる。  僕は、いとおしい彼の手に、唇を押し付けた。  シノさんは視線を泳がせると、やがて僕のアソコを見て、正気に戻ったようだった。 「 ── 千春・・・、イケなかったのか?」  僕はシノさんを安心させるように、シノさんの頬にキスをする。 「タイミングあわせるのって、結構難しいから。気にしないで」 「だけど・・・。そのままじゃ辛いだろ? どうしたら・・・」  僕はシノさんの唇を指でなぞった。 「手伝ってくれますか? 僕がイクのを」 「う、うん・・・。うまくできるか、わからないけど・・・」 「じゃ、手を貸して・・・」  シノさんが手を差し出したので、僕はそれを僕のペニスに誘った。  シノさんの大きな手が、僕を握る。もうそれだけで、僕の腰はじんわり熱くなる。  僕はシノさんの手の上に自分の手を重ねると、ソコを扱いた。 「アッ、あぁ・・・!」  思わず声が出る。「うわ・・・」とシノさんが呟いたんで、「気持ち悪い?」と僕は訊いた。シノさんは、首を横に振る。  何だか神妙な顔をしてたんで、僕は微笑んだ。 「エロい?」  試しに訊いてみると、やっぱりシノさんは頷いた。   ── フフフ。カワイイんだから。  ソコから、ちゅっちゅと濡れた音がする。  僕はシノさんに耳打ちする。 「恥ずかしいほど濡れてるでしょ、僕の・・・」 「あぁ」  シノさんが頷く。  シノさんが僕を見つめるのを確認して、僕は囁いた。 「シノさんが僕をこんなにしたんですよ」 「俺が・・・?」  僕は頷く。   ── ああ、もう限界かも。 「ハッ、あぁ・・・。もうイキそう・・・」  僕は再び身体を起こし、顎を反り返らせた。  突如、シノさんが腰を揺らした。  僕の身体が、ビクリと跳ねる。 「アッ! もう!! 何? 復活?!」  僕が険しい顔でシノさんを睨みつけると、シノさんが「だって、だってさ・・・」と言い訳しようとする。  僕は、唇を噛み締めながら、グスンと鼻を鳴らすと、 「三十路過ぎたオッサンだなんて言ってたくせに、ひどい」  と言ってやった。 「ごめん、千春」 「謝ってないで、早く突いてよ!」 「なんでこの期に及んで、ドS発言なんだよ!」 「シノさんが悪いんだからね」  言い合いしてたらなんだかおかしくなってきて。  また二人で笑った。  シノさんが腰を使う。  僕の感じるか感じないかの際どいところを擦っていく。  気付けば、シノさんが僕のペニスを可愛がってくれてて。 「あぁー・・・っ」  いつの間にか僕は、今まで自分でも聞いた事のないような、甘い声を出していた。  このままずっと、シノさんと抱き合っていたい。  今この瞬間に、世界が終わってしまえばいいのに・・・。 「ホント、もうダメ。限界。・・・イク、イッてしまう・・・・ッ!」  いよいよ僕は我慢ができなくなって、シノさんの身体の上にザーメンをぶちまけた。 「うっ、わ!!」  シノさんがギュッと目を瞑る。  ああ、頭がしびれるような感覚。  二人で座位になって、ギュッと抱きしめ合った。  ハァと吐息をついて、ゆっくりとキスを交わす。   ── セックスした後のキスって、今までまるっきり興味がなかったけど、いいものだな、凄く・・・。  僕は、身体を引いた。僕の中からシノさんが抜けていく。 「わっ、わわわ・・・・!」  シノさんの腕に鳥肌が立った。 「何? 大丈夫、シノさん」 「いや・・・イッたばかりだからさ」 「何だよ、シノさん。絶倫だな」 「バカ、んな訳あるか。無理だよ、もう」  僕は、シノさんのペニスからゴムを抜き取った。  それを目の前にかざすと、さすがに僕も目を見張った。 「わ、本当だ。結構出てるよ、シノさん。大量だよ、これ」  シノさんは、顔を真っ赤にして、明後日の方向を見やる。 「だってそれ、二回分だから・・・」 「え? それって、最後にまたイッたってこと?」 「だってさ。千春がイク時、びっくりするぐらい締めるんだもん。あれじゃひとたまりもないよ」  へぇ、驚いた。  自分がイクことに必死で、全然気がつかなかった。 「まぁ、絶頂を迎える時は、確かに締まりますからね、アナルは」  シノさんが、片手で顔を覆う。 「うわ~・・・露骨だよぉ・・・」 「なに? 言い方? だって、単なる単語でしょ。部位の名前」  まったく、子どもみたいなこと言い出す人だな、シノさん。「俺、絶対に、言えない」とかって言ってる。 「で、どうでした? 初めてのセックスは。気持ちよかった?」  僕がそう聞くと、シノさんは天を見上げて頬をカリカリと掻いた。 「うん・・・。よかったよ。でも気持ちよかったというか・・・。もちろん、凄く気持ちよかったんだけど・・・」 「うん」  シノさんは、ふと僕を真っ直ぐ見た。 「初めての相手が、千春でよかったって感じ」   ── この人、案外メチャメチャ、プレイボーイになるかもしれない。  僕は、何だか得体の知れない思いを感じて、身震いをしたのだった。
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