金のわらじを履く

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金のわらじを履く

「あんたさ、もういくつになったと思ってんのよ。」  しつこく鳴る電話にでると、やはりお母さんからだった。  黄金連休は仕事で忙しいと嘘をついて、実家に帰らず、男友だちや女友だちと遊び歩いていたツケがこれだ。 「はい。おかげ様で28歳ですが。」 「あんたね、世間ではそれを適齢期をとうに過ぎているって言うのよ。お隣の金本さんちのお嬢さん、かわいいお孫さんを連れて帰ってきたわよ。あんたもさ、それが無理なら、せめて彼氏くらい連れてきなさいよ。ねえ、聞いてる。」 「はい、お母さんは毎日お父さんにせめられ泣いているんでしょ。」 「まだ、それは言ってないけど、わかってるなら・・・」 「はい、金のわらじ履いて探します。」  私は電話を切り、大きなためいきをつく。この鉄板をとおりすぎ金字塔となったお説教は、もううんざり。何百回聞かされたことか。  お母さん、お説教の金メダル選手だね。  それにしても結婚相手は金のわらじ履いて探せって、いつの時代だよ。もう、令和だよ。時代遅れも金メダル選手だね。そもそも、私は女だよ。男が 金のわらじ履いて探すんだろうが。怒るぞ。  まあ、金の靴を履いているような男は、センス悪いわね。さりげないところに金を身につけ、一流ホテルのフレンチレストランのランチの支払いを金のカードで払い、「じゃあ、行こうか。」って、スイートルームの金の部屋の鍵をごく自然に見せる男が理想だわ。昼間から東京が一望できるエレベーターの中で後から抱きしめらて、私のうなじに・・・・・。  スイートルームでは私にブランドの真っ赤な靴をプレゼントしてくれて、それだけを履かせて、ベッドで・・・・。  私の妄想は止まらない。
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