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園村あやは偶然を引き当てる女であった。
ゆるふわの茶髪をフィッシュボーンにして、カーキ色のセットアップで上品にまとめたファッションの日であった。
逆三角形のゴールドの小さなイヤリングは歩くたびに光を反射した。駅の周辺で突然後ろから引き留められる。警戒して振り向くと先日の彼がいた。
「ごめんなさい。もしかして、先日声を掛けてくれた人ですよね!」
もしかして、とですよね!の語尾が合っていない。
「服とか髪とかが変わっててわからなな......わからなかったんです。いや、昨日の夜よく思い出したら同じ人かもって」
けれど間違いない、コイツだ。
園村あやは憤慨した。
たかがファッション1つ、髪型1つで誰だかわからかくなるなんてそんなものは恋ではない。
100点どころか0点である。
だが、次の一言でそんな気持ちは吹き飛んでしまった。
「いつ見てもお洒落で可愛いですね」
不覚にもその笑顔を愛おしいと感じてしまった。
これは恋ではない。だが、不本意ながら胸の奥がジンジンと疼くのだ。会えて嬉しいと思ってしまうのだ。だから園村あやは折衷案を出すことにした。
「お友達から始めませんか?」
これが100点の恋になるかはまだ、わからない。
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