お友達から始めませんか

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 ーー翌日。  やはり園村あやは恋多き女であった。  昨日フったはずの男のことが忘れられない。 「彼は私のどんなところを好きになってくれたのだろう」 「童顔なだけで本当は年上だったのかもしれない」 「もっとお話していれば良かった」  後悔が波のように押し寄せる。  バブルバスにアヒルを浮かべながら物思いにふけるのが彼女の常だが、どうも彼のことが気になってしょうがない。  元から細い脚をもっと細くなるように念入りにマッサージする。香水を「彼がキスしたくなる3秒前」に変える、等行動にも変化が現れる。  会えるものならもう一度会いたい。そんな気持ちから住宅街近くの駅前で散歩をしながら毎日のように来る人来る人を見るようになった。  そして待つこと1週間。  その日は弟のお迎えもあって、ボーダーのトップスにボーイッシュなオーバーオールを合わせたコーデで駅の待合室にいた。前髪も入れ込んだお団子ヘアが上手く決まったので気分も上々である。  すると、彼らしき人物が近くの壁側にもたれかかっているのが見えた。  実は園村あやはほとんど男性に話しかけたことがない。イヤホンをしている彼に話しかけるのは並々ならぬ勇気が必要だった。 「あの、あなた先日の......」  イヤホンを外した彼は怪訝そうな顔をする。 「どちら様ですか?」  彼は告白までしたくせに自分のことを覚えていない。園村は心底がっかりした。やはり自分と同じような惚れっぽい人間を信じるべきではないのだ。  園村はむしゃくしゃしてその夜、特別な日用に取っておいた美肌パックのプレミアムケアを使った。 .
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