はじめに

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はじめに

 先日、私の友人が突然の病気で亡くなった。この物語は、その彼が書いた作品である。  彼の葬式の日、彼の母親から、私宛ての一つの茶封筒を手渡された。その茶封筒には、一枚の手紙とともにUSBメモリが1つ入っていて、彼の手紙には、「手紙と一緒に入っているUSBメモリにはある小説が保存されている。それは少し前に君に語ったあの話だ。ほかの人はどうだったかしらないけれど、君は僕の話を一番信じていてくれそうだったから、君にこの物語を託す。なんとかして世に出してほしい」と書かれていた。  私は、彼の最期の願いに応えるべくこの小説を作成した。とはいっても、ほとんど彼の文章そのままであり、私は、形式的な修正を少し加えたのみである。関西弁が少しおかしなところもあるかもしれないが、ネイティブでない彼が書いたものであるから、大目に見てあげてほしい。  私は、この彼の物語が夢物語ではないかとの疑いを全く有していないわけではない。しかし、彼の主張することであるから、彼が本当にあったことだというなら、私はそれを信じたいと思う。ただ、みなさんが信じるかどうかは、やはりみなさんの自由であり、ご自身で判断していただきたい。それが彼の願いでもあるだろう。  彼が亡くなったのは、もしかしたらここで述べられている「鬼」のせいなのかもしれない。そうであるとすれば、彼の死は、彼を引き留め、終電を逃させ、奇妙な電車に乗って異なる世界へ行くことになるきっかけを作った私のせいなのではないかと考えられるところであり、ひどく後悔もしている。彼が向こうの世界でも楽しそうにしていたことがこの物語からうかがわれることだけが、私の唯一の救いである。  最後に、彼の冥福を祈るとともに、私からも、多くのみなさんが、この話を読んで、別の世界を知っていただけることを祈っている。 ―――私の友人に捧ぐ  平成28年7月12日
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