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しかし喜びもつかの間、彼は悩んでいた。
これをどうするか、をだ。
像の全てのパーツを合計すると、重量は百キログラムでは利かない。
幸いパーツはくっついていないから、もう一度バラバラにして運ぶことにした。
個人で重たい石塊を――しかも六つも――山道を担いで家まで持ち帰るのは、苦行にも近い。
全てを同時には持てないので、一塊だけ抱えて自宅まで戻り、普段材木を乗せている荷車を引っ張り来た道を引き返した。
丁寧に、これ以上傷や汚れがつかないよう慎重に象の欠片を荷台に積み重ねる。商品の材木を運搬する時以上の、細心の注意を払って、男は真っ暗になった夜の森を踏破した。
狼の遠吠えが響く中、家に着いた頃には、心も身体もすっかり消耗仕切ってしまった。いくら森に住んでいる彼とはいえ、夜の森ほど恐ろしいものは無い。
頼りの月明かりさえ深い木枝に遮られ影を潜めているのが、数段、恐怖を上昇させた。
最後の力を振り絞り、屋内まで一つずつ運ぶ。
六つ揃うと、散乱した女神像と共にそのまま床で夜明けまで横になった。
ガラスもはまっていない窓穴から陽光が流れ込む。
男は何十年ぶりかに、日の出後に目を覚ました。
日頃の重労働のおかげで身体は丈夫なつくり。目立った疲れはないものの未だ夢現な様子だ。
けれど、重たいまぶたを開いてこざっぱりした部屋を見渡せば、昨日の出会いが夢では無かったと実感した。
男は意味もなく焦って、元通りに組み上げる。
昨日、森の中で落としきれなかった泥や苔をヤスリで擦り削り落としていく。
磨き終わった像を明るい場所で見ると、発掘時よりも輪郭がはっきりと認識できた。
整った顔立ちとプロポーション、腰布だけを身に纏った半身半裸の女神像。左手はリンゴを持って台座に置かれ、柱状の台座に置かれている。右手は左大腿にそっと添えられている。
くすんだ純白の肌が日光を反射する。
本物の女神と見紛うほどに美しかった。
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