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花は散り、そして咲く
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秋の昼下がり、俺はとある男性と廃れたビル群の中で座り込んでいた。
「どうですリュウセイさん、探し物は見つかりましたか?」
「いや全然だね、こうも見つからないと気が滅入ってきちまうよ……。」
体の奥底からため息が吐き出される。無理もない、この男性は長年をかけて探し続けて来たのだ。それは冗談にならないほどの労力と強い信念からなされる賜物だ。
「最近は夢まで見るんだ…。すぐそこにあるのに手を伸ばしても届かないんだ、まるで嘲笑うかのようにな……。」
「そうなんですか、でももうそろそろ見つかりますよ。」
「なんでだ?」
男性は不思議そうにこちらを見た。
「よく親父が言ってたんです、追い求めてたものは先に夢で現れるって。」
「そうか……ありがとう。シヤ君も頑張ってくれよ。」
「はい、お互い頑張りましょう。」
そう言って俺たちは立ち上がりそれぞれ歩き始めた、夢を探すために。
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俺は別れたあとに少し離れた人工地下洞窟の中で作業を始めた。次々と出てくる瓦礫を取り除きながら先へ先へと掘り進める。少し気になるものが見えたら丁寧に取り出して保管する。そしてまた掘り進めていく。
俺はトレジャーハンターだ。眠っている過去と出会い新しい世界へと導くのが役目だ。
初めてトレジャーハンターじみた事をしたのは十一歳の頃だった。崩落したビルの瓦礫の中へ勝手に一人で潜り込んで行き、一番奥で静かに光る歯車を見つけた時の感動は忘れられない。その感動を忘れられなくて今まで多くの物を探す旅をしてきた。――群青の撥条時計にガラスで出来たオルゴール、未知の通信機器。どれも素晴らしい出会いだった。
だがいつも見つけられる訳じゃない、これを仕事としてやっていける訳でもない。実際やっているのは金属品を回収して売ることだ、誇れるようなことじゃない。
だけどそれでも俺は満足している、金なんか気にしていない。好きでやっていければなんの問題もない。そうやって今日もこの手を進めているのだ。
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