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「誰だ!」
俺達は近づいていた存在に気づかなかった。慌てて後ろを向くとそこには男性が立っていた。
「久しぶりだね、シヤ君。」
「…………リュウセイさん? どうして…、さっきの言葉は?」
「そのままの意味だよ。それは今でも解明出来ない魔力の原理で驚異的な力と生命力を手に入れた。そして今でも魔力を使えるものは少々いるが、それは誰よりも膨大な力を蓄えているんだ。それはとても美しい輝きでね、私は長年追い求めてきたんだ。シヤ君、君の言うとおりだったよ。」
「え? ど、どういう……。」
「言ったよね、夢で見たものは必ず手に入るって。さぁ、…こっちに来なさい。」
リュウセイは微笑みを浮かべながらこちらにゆるりと手を伸ばしてきた。
「ふざけるな! 誰が貴様についていくか!!」
「……やっぱり駄目か。まぁその力さえ手に入れば、私は別にいいんだけどね。」
伸ばした手を腰の後ろへと持っていきまたこちらに伸ばした。その手の先には黒い拳銃が握られていた。もう彼の顔には笑顔はない。
「動くなよ、余計な傷は付けたくないんだ。」
二度三度爆音が響き渡る。彼女は慌てて両腕を交差し腰を落としたが、放たれた弾丸は青い衝撃波を放ち彼女を壁のさらに向こうへと弾き飛ばした。
爆音がさらに響く、砂ぼこりが舞い上がる。その音は状況を理解できなかった俺の頭を覚ますには十分すぎた。
「くっ、黒咲さんっ!!!」
俺は叫んだ。駆け寄ろうとしたが足が動かなかった。自分自身がどうすればいいかが全くわからなかった。
「凄いだろう、最新型の念導銃だ。」
リュウセイはこちらにそう言いながら次の弾丸を装填しながら装填している。
「彼女を傷つけないでくださいリュウセイさん! ……あなたのしていることは間違っている!!」
「うるさいっ! 邪魔をするな!! 間違っているだと?お前に何がわかるっていうんだ!」
その時、俺はその言葉が変に感じた。そうだ、俺の心情だ。まるで鏡に映ったように俺の心情とまったく同じだった。彼の言うとおりだ、俺には何もわからない。だけど。
「あれは自ら望んで力を手に入れた兵器だ! お前なんかがどうこう言えるものじゃあない!」
確かにそうだ、俺は彼女に関わる必要も無い。ただの迷惑だろう。だけど。
「邪魔をすると言うのならば、お前も撃つぞ!」
リュウセイは苛立ちながらこちらへと銃口を向けてきた。けれども俺は見捨てられないさっきまでのやむやが全て晴れたような気がした。
「……リュウセイさん僕はこう言いました、『追い求めていたものは先に夢で現れる』って。」
「そうだが、何だ?」
「必ず手に入る訳じゃないんですよ!!」
そう叫んで俺は床に落ちてたスパナを拾い上げてその男目掛けて走り出そうとした。奴との距離は三メートル、行ける! 歯を食い縛って足に力を込めて飛びかかる。幸いリュウセイは呆気にとられて動いていない。届け、届け!!
爆音がこだまし薬莢が中を飛んだ。風切り音と共に左肩に鋭い痛みが走る、身体中に力が入らず後ろへと吹き飛ばされる。
「………っああぁ!!!」
――痛いっ!! 肩の傷を押さえるが血はどんどんと流れ出てくる。
「お前ぇ! 死にたいのか? いいぞ、殺してやる!」
俺に銃を向けたままこっちに距離を積めてくる。その顔には憤怒以外の感情が無かった。
「最後に何か言うことはあるか? 馬鹿野郎!」
「………えぇ、俺は馬鹿で自分勝手なお節介野郎です。」
もう肩の痛みなんて感じなくなってきて口から次々に言葉が出てくる。別に正義ぶって言ってる訳じゃない。これは本心だ、とてもとてつもなくカッコ悪い本心だ。
「でも……だからこそ、俺は! あいつを助けたいんです!!!」
「そうか……、なら死ね!!」
荒々しい死刑宣告と共に弾丸が頭目掛けて放たれた。俺は目を閉じてその時が来るのを静かに待った。
だがその時は来なかった。弾丸は確かに飛んできていた、だが実際起きたことはまさかの出来事だった。
「――ぅうおおおおぉぉぉぉ!!!!」
鋭い雄叫びと共に飛んできた黒咲が握りしめた紅い拳を青い弾丸に殴り付けた。今までとは比べ物にならない威力の深紫の衝撃波に俺は吹き飛ばされた。拳と弾丸は一瞬膠着したが、色を失った弾丸が儚く砕け散った。
「き、貴様! 生きていたのか!!?」
信じられない、リュウセイはまるでそう言いたげな顔をしていた。
「当たり前だ、どう考えればあの程度で私が死ぬと思う?」
弾丸を何発もう受けたずなのに彼女の身体には傷といった傷はどこにも見当たらなかった。
「………くっそおぉぉ!! なぜだっ! 私の、私の夢をっ!!!」
リュウセイは憤怒に顔を歪めながら銃口を黒咲に向けた。
「ふざけるなあぁぁぁ!!!!」
怒り任せに放たれた四発の弾丸は全てが彼女の頭へと伸びていった。が、彼女は臆することもなくただ一回拳を振った。一閃、紅い拳とぶつかった瞬間弾丸は拳銃と共に塵となり宙を舞った。
「………凄い。」
俺は今までの人生で赤にまつわる事はろくな事が無かったため赤という色があまり好きではなかった。だが今この瞬間、俺は初めて美しいと感じた。
驚きを隠せないリュウセイの顔面に間髪入れず拳が叩き込まれた。紅い閃光が部屋中を走る、声にならない音が響き渡る。
「吹き飛べぇぇ!!!」
怒りの怒号と共に振りきられた拳は襲撃者をこの狭い空間ごと吹き飛ばした。
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