天気予報は嫌いだ

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今日はこれから、明日返却のレンタルDVDを纏め見しなきゃだし、とっとと家に帰りたかったのに。 面倒くさいけどそう距離があるわけでもないし、取りに戻るか…… ……あぁ、また予定が狂っちまった。 来た道をUターンして、途中で買った缶コーヒーで暖を取りながら予備校の裏口まで戻る。 「あれ」 事務室外の傘立ての前まで来て、俺の濃紺の傘が見当たらないことに気がついた。 マジかよ、誰か間違えて持っていった? いや、でもこの傘立てを利用するのはここの職員と講師くらいで、同じような傘を使ってた人はいなかったよな。 てことは、見知らぬ誰かに取られたとしか…… 頭をがしがしと掻きながらヤケクソ気味に壁に寄り掛かる。 只でさえ予定が狂ってイライラしてたのに、そのうえ傘までパクられたなんて、 「はぁ…………ツイてねぇ……」 コーヒーのタブに手をかけた時、 ふと、職員駐車場の植木の下に動く人影を感じて、思わずビクッと身体を震わせてしまった。 防犯のため駐車場を照らしている常夜灯のおかげで、それが誰かはすぐにわかった。 あの長い黒髪のポニーテールは…… ……朝日だ。 何してんだ、あんなところで。 授業のあととっくに帰ったと思っていた朝日が、こちらに背を向けて植木の下にしゃがみこんでいる。 しかもよく見たら、その手元にあるそれ、俺の傘じゃねーか……?
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