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俺がぶつぶつと弁解していると、
「プッ!」と真下から吹き出したような声がした。
「何それ!可愛い子猫を宇宙人と一緒にしないでよ」
アハハと可笑しそうに笑い出した朝日に、俺は一瞬面食らってしまった。
飄々とした一匹狼だと思ってた朝日が、こんな風に声を上げて笑うなんて。
切り揃えられた前髪から垂れた眉が覗いて、ツンとしたいつもの無表情よりもだいぶ幼い。
朝日は一頻り笑った後、子猫の頭をそっと指で撫でた。
「教室から見えて、前から気になってたんだよね。
他にも何匹か居たっぽいんだけど、母猫らしい姿もないし、この子だけはぐれちゃったのかも」
薄紫色のハンドタオルで朝日が小さな頭を優しく拭くと、子猫は身を擦り寄せるようにして「ミャー」と鳴いた。
なるほど……朝日が教室から見ていたのは、猫だったのか。
「は、くしゅん」
朝日が、小さくくしゃみをして身震いする。
雨が降ってかなり気温が下がったというのに、いつからこんなところに居たんだよ……
俺は手に持っていた缶コーヒーを朝日に差し出した。
「さっき買ったばっかでまだ温かいから」
「え?」
「言っとくけど開けてもねーよ!ほら!」
よく考えたら女子高生がブラックコーヒーなんて飲まないかもしれないし、俺なんかの手に握られてた缶は嫌かもしれないけど、
差し出した手前、受け取ってもらわないと格好つかない。
俺は朝日の手に缶コーヒーを押し付けるように渡して、「ちょっと待ってな」と事務室に引き返した。
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