天気予報は嫌いだ

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天気予報は嫌いだ

「……だから、天気予報は嫌いなんだ」 溜め息混じりに溢した呟きは、雨上がりの濡れたアスファルトに呆気なく溶けていく。 ―――元を辿れば15分前…… 20時ジャスト。よし、予定通り。 退勤打刻を済ませ事務室脇の出入り口から外に出た俺は、思わず空を見上げた。 一時間ほど前まで降っていた雨が、嘘のように止んでいたのだ。 「……誰だよ、降水確率100%っつった奴」 誰ってそれは、朝のニュース番組で人気のアイドル声のお天気お姉さん(つってもだいぶ年下)なわけだけど。 『日本列島をすっぽり覆って停滞している低気圧の影響で、夜遅くまで傘が手離せないでしょう! ちなみに降水確率100%って、一年に数回しかないんですよー!』 とかなんとか言ってたよな、確か…… スマホチェックがてらネットで天気予報を開くと、ちゃっかり18時以降は80%に修正されていた。 もう少しで駅というところまで歩いてきて、 行き交う人の手元に視線が留まり、俺は「げェ……」と唸り声をあげてしまった。 ……職場に傘忘れた。 しかも、さっき見た天気予報によると明日も朝から雨だとか…… 一人暮らしの男が二本も三本も傘持ってやしないし、 コンビニでやたら高いビニール傘をわざわざ買うのも悔しいんだよなぁ。 あー、雨が降ってりゃ、傘を忘れることなんてなかったのに。 ……だから嫌なんだ。 天気予報みたいな、不確かで曖昧なものは。
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