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足りなくなる
お、お目覚めか? 今日はいい天気だ。ほら、窓から入る風が気持ちいいだろ?
なんだ、まだ寝ぼけてるのか? そんなところ悪いんだが、お前に頼みがあるんだよ。まず俺の話を聞いて欲しい。
俺はずっと100を越えたいと思ってきた。その数字は俺にとって上限の象徴として、呪いのようにへばりついて離れることがなかった。
テストはどんなに頑張って勉強しようが100点以上をとれることは絶対になかったし、小さい頃から続けていた空手の大会で優勝した時も、
「自分の力を100%出しきれたから勝てたのよ」
なんて言われる始末だ。
お前は100の意味をちゃんと調べた事があるか? 100ってのはイコール関係で完全という意味で、完全は欠けたところや足りないところがないことやそのさまを表すんだそうだ。
その言い分でいくと、俺自身さえ100でしかないと改めて気づかされて絶望したよ。人間としてかけたところや足りないところがない、五体満足のこの俺は。
だけど調べていくうちに、完璧という言葉の方がより強い意味を持つ言葉であると説明しているサイトを見つけた。
遂に見つけたと俺は歓喜に震えたよ。完璧になれたなら、それは100を越えたということになる可能性があるのだと。
そして考えた。今の完全でしかない自分を、完璧にするにはどうすればいいのかを。
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