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「あの~」
西山が恐る恐る声を掛ける。
「あの、阿佐美、それ、俺の」
「変態」
「いやあれは不可抗力だ」
「ミロのヴィーナス」
「おい勇治!」
「まあいいよ。鍵くらいかけておくべきだった」
阿佐美はウーロン茶を冷蔵庫に戻す。
「てかいい加減給湯器の修理してもらいなよ」
西山が言う。
「頼んでるんだけどね、やっぱり物流が本土とは全然違うのかなあ」
「サトウキビ畑ばっかりだもんなあここ」
「どうも佐藤です」
渾身のボケをかます阿佐美。
こういう他愛のない話をするだけでも少し気分もリフレッシュできる。年が離れていても、同期は同期だ。
翌日は夏のようにきれいな青空が広がった。だが、勇治は朝から胃痛を感じるながら空港に向かった。阿佐美の組が先にフライトをしている。事務所の窓から阿佐美の操縦する機体を眺めていた。
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