『あいつを採用させよ』編

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『あいつを採用させよ』編

 日東航空株式会社の運航本部でB767の機長である藤田三成は、同期で同じく機長の水島憲昭に駆け寄った。 「おい水島!オセアニアの機体がエマラン(Emergency Landing=緊急着陸)するらしいぞ!」 「エマラン?何で?」 「ハイジャックでパイロットが殺されたらしい」 「それって'99年の61便と同じじゃないか!」  1999年、当時大学生の航空マニアがB747型機を乗っ取り、機長が殺害される事故があった。 「今回はコパイも殺されてんだって。しかも中学の修学旅行の団体で、数名だけ一般が乗ってたらしい」  コーヒーを飲みながら新聞を読んでいた水島は、コーヒーを吹き出した。 「じゃぁどうやっておろすんだよ!」  藤田は興奮している気持ちを一度落ち着かせ、水島の目を見つめながら言った。 「中学生がやってる」  水島は18年間パイロットとして日東航空で勤務しているため、数多くの航空アクシデントを目にしてきたが、中学生が操縦をするということは初めてだった。
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