『天野、死す』編

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『天野、死す』編

 8月に入り、外のセミの合唱が心地よい。結局夏休みの旅行は、天野がシンガポール一人旅で行くことで決着していた。正直、旅費を快諾して出した天野の両親を羨ましく思った。案の定勇治は良心に旅費を出してもらえず、小遣いだってとてもシンガポール旅行をするには足りなかった。  今朝天野は羽田からシンガポールに出発した。天野が搭乗直前の待合で「行ってくる」とだけ勇治にメールを送っていた。午後4時を過ぎ、そろそろ天野が現地に着くころだ。勇治は寝ころびながらテレビを見て、天野の連絡を待っていた。きっと搭乗機材の写真でも送ってくるだろう。そう思っていた矢先だった。  テレビの画面の上部に、「ニュース速報」と表示された。 「ん?なんだろ」
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