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大切な言葉
「静くん…好きだよ。好き…愛してる…」
月の綺麗な夜にたくさんの透明な青色と共に伝えられた言葉。
嬉しいはずなのに、頭にはきちんと届いているのに、俺には意味がよく分からなかった。
『愛してる』
お前のその言葉は俺なんかじゃなくて、なんていうか…もっとこう…大切な人のために言うものじゃないだろうか…?
俺みたいな欠陥品じゃなくて…
もっとお前のことを大切にしてくれる人に…
「静くん…?」
お前に呼びかけられ、俺はハッとする。
「あ…」
視線をお前に移すと、まだ濡れている金茶色の瞳は不安に揺れていた。
「……少し考えさせてくれ」
ほとんど反射的にそう言って次の瞬間、俺の胸を酷い後悔が埋め尽くす。
「そう…だよね…急にこんなこと言われても…困るよね…だって静くんは……」
言いかけた言葉を飲み込んで、お前は手の甲でこぼれ落ちる涙を拭った。
「こんな時間にごめんね、おやすみセイ」
俺はお前の傷ついたような顔に、ただ頷くことしか出来なかった。
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