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だから正直、この展開は予想していなかった。
「おめでとう、あなたは記念すべき100人目だよ」
そう言うと、目の前の細身の男は、剪定用の鋏を両手でじゃきじゃきと鳴らしながら近づいてきた。
ここはどこだろうかと見渡してみれば、すでに使用されていないであろう廃工場か倉庫跡と思われた。
壁や柱、天井の赤茶けた錆に放置された年月を感じた。
そこにぽつんと正座させられて、後ろ手に縛られているのだ。逃げられないのを悟るのに、そう時間はかからなかった。
彼はとうとうとこれまでの思い出を、鋏を鳴らしながら語った。日本人形のように真っ直ぐまっさらな黒髪の女の子の細く白い首の話から、ずんぐりむっくりとした中年男性の話まで、彼なりの“武勇伝”は続いた。
私は覚悟を決めるしかなかった。
せめて、最期の最後で「100」人目になれるなんてという皮肉めいた我が人生を良い意味で笑おうと思うのだ。
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