2 依

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二十歳(はたち)かあ。若いな」 「航大も若いじゃん」 「まあそうだけど、二十歳に言われるとなんかなあ」  航大は苦笑いをしながらコートを掴む。そして「まあ、とにかくさ」と、二重(ふたえ)の瞳を僕の方に向けて微笑んだ。 「3月までに欲しいもん考えとけよ」 「あー、うん。ありがとう」  4ヶ月先も、航大との関係は続いているのだろうか。僕から切ることはないから、結局は彼次第だ。  部屋を出る間際、航大は不意に僕の方に振り返り、「そう言えばこの間貸した本、今持ってる?」と尋ねてきた。 「持ってるよ」 「返してくれない?」 「うん」  ベッドから出るのが億劫で、腕だけを布団から出して航大の足元を指差す。「そこに入ってる」と言うと、航大は床に転がしてあった僕の黒いリュックサックを取り上げた。  ファスナーを開け、雑に腕を突っ込む。その様子を見ていると、先程までの彼との行為が脳内に甦る。  彼の太い指が探り当てたのは、しかし文庫本ではなかった。  紺色の壁と絨毯。白いシーツ。ほの暗いこの空間で、それは異様な程の色鮮やかさをまとい空気の中を泳いだ。 「なにコレ」  彼は手にしたゼリービーンズの絵柄の手帳を、まるで汚いモノでも触るように持ち上げている。確かにそれは、このホテルみたいに薄汚いし、僕たちの関係のように不自然な色合いをしている。
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