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師匠の青春時代
"あいつ"と俺は、所謂ライバルってやつだった。
学生時代はいつも1st、あるいはソロを取り合っていた。
性格は真逆だったが、だからこそ気が合ってよくつるんでいた。
俺はイエローブラスの、伊音に言わせれば金ピカのトランペット、あいつはシルバーブラスの銀のトランペット。いつも同じ空に向かって掲げていた。
…この光景はいつまでも変わらないものだと思っていた。
音楽に関しては俺の隣にはあいつが、あいつの隣には俺がいるものだと信じて疑わなかった。
あいつが俺と別の道を歩むと決めた時、それなりにショックではあった。聞かされた時には既に俺に言えることは何もなかったが。
だが今はあいつそっくりな息子が、あいつと同じ型、色のトランペットを掲げている。
-不思議な縁もあるもんだ。
親父にそっくりな顔、吹き方をしやがる伊音を見ながらしみじみ思う。
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