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02.百人一首の38番
「おい若いの、この和歌を知っているか?
『忘らるる 身をば思はず 誓ひてし
人の命の 惜しくもあるかな……』」
「知らん!」
「無学な奴め。百人一首の38番、右近の作じゃ」
「それがどうした?」
「この和歌は吾輩のお陰で生まれたのじゃ。
右近に言い寄った男は相当なプレイボーイでな。
神に誓って彼女を愛すって言いながら、他の女をつくって捨てたんじゃ。
そこで吾輩が、呪い殺してやったんじゃ。
まぁ、サイコな粘着女ではあったな、右近は」
「だからどうした!」
「待て、待て。……だからって言われるとアレだけど。
……つまり、尊い? とかそんな感じとちゃう?
吾輩が、呪い殺したから、生まれた傑作よ、これ」
くそっ、1ミリどころか、100ミクロンも聞く耳持たんではないかっ!
大体にして、日本男児のクセに、和歌も知らぬとか。
花を愛でる心を持てとまでは言わぬのじゃが、風情のない奴よ。
吾輩なぞ、百日紅を見ては、感動で心を震わす女子力の高さを誇っておる。
『君と好きな人が百年続きますように』
……え? その歌はハナミズキじゃと? 猿、スベったわ。
だが、吾輩も百戦錬磨の妖。
百獣の王の如く、威風堂々と迎え撃ってくれるわ!
……と言いたいのはヤマヤマだけど、もうちょっと話し合ってみない?
だってほら、百獣王が能力者相手にとか。ツボるわ。
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