親殺し

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 金曜日の部活帰り。空が夕焼けで赤く染まっていた。いつもの3人で帰り道を、いつものように遊ぶ予定を立てながら歩いている。 「サイゼで食ってくかぁ?」 「今オレ金ねーよ。マックでよくね?」 明日どの飲食店に寄っていくかをヒロとタツヤが話し合っているのを聞きながらも、おれの意識は別の思考へ遠ざかっていく こいつらと別れた後、帰路に着くーー…そのあとの気分は想像出来た。家へと向かっていく足を止めたかったがこいつらに不審がられるし、腹も減っているのでやめておく。メシだけは用意されているはずーー… …くそ。考えるのもめんどうだ。 そう思って意識を目の前に戻す。…何故かヒロがニヤニヤしながらこっちを見ていた。なんだ?と思いながら、あれ、タツヤはーー… 「ワッ!!!」 「みぉっ!?」 自分の口から変な音が出た気がした。いやだってビックリしたし、というか 「タツヤぁ!しばくぞ!?」 おれの耳もとでデカイ声を出しやがったアホが笑いを堪らえたように口をヒクヒク動かしていたが、すぐに耐えられずに吹き出した。 「ふっ…ハハハハハハハハハハ!!ヒー…ヒー『みぉっ』って!!お前『みぉっ』て…ごふっ!?」 問答無用で拳を一発ぶちこんだ。当然の制裁である。 「…どうしたんだアキラ。ぼーっとして」 ヒロは冷静を装っているが、肩が小刻みに動いている。こいつら… 「…はぁ。なんもねーよ。それよりどこ食いにいくのか決めたのか?」 話題を戻す。タツヤはサイゼリアに行きたがっていたが、マックは安上がりだ。小遣い節約の誘惑には誰も逆らえず、マックに行くことに全会一致となった。 この3人でいるのは、楽しい。気が楽で、なんでも遠慮なく話せそうな気がした。たった一つのことを除いて。 居心地がいいのだ。ずっとこの空間に居たいと思ったが、帰らなければいけない。 「じゃあ明日ヒロん家前集合なー!」 「おう。…じゃあな」 交差点で二人と別れる。ここからは一人だ。 一人だ。 足取りが急に重くなっていく。歩くペースが落ちていく。刑罰執行を少しでも遅らせる囚人のような無駄なあがき。 家が見えて来る頃には、夕日は消えかかっていた。夜の闇が空を少しずつ侵食していく。
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