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「あなたのことはとっても好きよ。二番目にね」
ボクが「きみの一番になりたいんだ」と言うと、かのじょは首を横に振ってそう言った。
かのじょには恋人がいた。いつも仲睦まじく寄り添う恋人が。
けれどボクは知っていた。かのじょが恋人から暴力を振るわれているのを。
だからボクは訊ねた。
「ボクじゃ一番になれないのかい? どうしてあんなやつと一緒にいるんだい?」
かのじょは答えた。
「あのひとが必要なの。あのひとにも必要なの」
ボクはかのじょと恋人の関係がどういうものかを知っている。かのじょにとって、よくないことであるということも。
だからボクはかのじょの恋人を殺した。
「これでボクがきみの一番だ! そうだろう?」
鼻息を荒げてボクが問うと、かのじょは同じように首を横に振った。
「いいえ。あなたは、まだ二番目よ」
「どうして?」
ボクは頭が冴えていたから、その自問に自答することができた。
「そうか、こいつはきみの一番じゃないんだ! だからボクはまだきみの一番じゃないんだ!」
ボクが見上げたかのじょの顔はにっこりとほほ笑み、そしてゆっくりと頷いた。
ボクはこのとき決心した。たとえ今はボクではないほかのやつがかのじょの一番であろうと、そいつを殺してかのじょの一番になってやろうと。
「やっぱり! ボクは前から思っていたんだ。きみほどの人が、こんなやつを一番にするはずがないと!」
決して揺るがぬ決意を胸にボクは改めて問う。
「さあ、ボクに教えてくれ。きみの一番がだれかを」
かのじょは楚々と答えた。
「わたしの一番は、ワタシ」
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