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目のやり場に困るくらいオッパイが目の前にある。女の人達のようだ。怖い感じがしない。
( 有り難い。)
帯人は朦朧とする意識の中で自然と両手を合わせて祈っていた。
気がつくと部屋の中に寝かされている。
何人もの人が身の周りの世話をしてくれる。
優しく言葉をかけながら。
船の上で飲んだ古い水のせいか、海の中で飲んだ海水のせいか、とにかくお腹が痛いし頭も痛い。
頭と腹の中がぐちゃぐちゃになるみたいだ。
激しく衝撃を受けた身体中の毛細血管が切れて不調をきたしている。
自分の意思では、どうすることも出来ない苦しみの中にありながら帯人は主人の令様の事を考える。
( 令様は生きていらっしゃるのかな?
大きな板に乗ってもらったけど、それが最後だった。)
子供のころから山の上の寺で育った帯人は一生そこから外に出ることは出来ないと思っていた。
空を自由に飛ぶ鳥に憧れて、山の上から遥か彼方に見える海の向こうに極楽浄土があると和尚様に教わった。
令様は貴族の子供で帯人とは住む世界の違う人だったのだが、なぜか初めて会った時から気があった。
令様はいつも帯人にこれ以上はないほど優しかった。
貴族の子供たちは皆なんでも仕事を押し付けて遊んでいるものなのに、なぜか令様はいつも帯人の側にいて
一緒に色々なことをした。
初めて会った時のことも、はっきりと覚えている。
( ああ、良かった。覚えている。)
記憶はしっかりとしているようだ。
( 頭が痛い。あー髪の毛が見えている。)
周りを見ると皆、髪の毛はムキ出しだ。
平安時代の日本では髪の毛を人に見せることは裸を見せるより恥ずかしいとされていたから、帯人はいつも頭に布をグルグル巻いていた。
( 服も違う。)
清潔な服を着せてもらっている。
目を閉じると深い眠りの中に引きずり込まれた。
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