旅の途中

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見たこともない植物の生い茂るジャングルの中に巨大なピラミッドがある。 高度な文明を持つ国であることは間違いない。 帯人は寺で今の日本で最高の教育を受けた。 先進国である唐へと行けば、令様と一緒に行けば、2人で手を繋いで明るい未来へ行けると思っていた。 目の前を青く光る大きな蝶が飛んでいく。 蛍光色に輝いてひらひらとフワフワとこの世のものとは思えぬほどの美しさだ。 帯人は子供のころから蝶が大好きだった。 どこへでも好きなところへ自分の力で飛んで行く蝶に憧れた。 親指の爪ほどの小さなシジミ蝶が大好きだった。 灰色の蝶だと思っていたら、羽根を広げると中には薄い青色が見える。 小さな美しい蝶を飽きることなく眺めたものだ。 いま目の前に飛んでいる蝶は見たことが無い艶やかな鮮やかな色をしている。 それにしても、この巨大なピラミッドはどうやって作ったんだろう? この大きな石は、どこから運んだんだろう。 階段状に整然と積み上げられ、どれほどの労力とお金がかかっているのか。 帯人はジャングルの中にそびえ立つピラミッドに近づいて行く。 まるで蝶に導かれるように。
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