プロローグ

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 通貨は2038年の世界大恐慌をきっかけに、新たな基軸通貨として「メイソル」という通貨ポイントによる電子マネーに切り替えられた。現金はもちろんカードなどを携帯する必要は無く、身体に埋め込まれた個人情報を経ての取引となったのだ。「埋め込む」と言うのは当初はマイクロチップのようなものであったが、それを切除して奪う犯罪が横行したため現在では細胞に情報を焼き付けるLT(レーザータトゥー)が主流となっている。細胞が死ねばその情報は無効となる仕組みだ。その情報は生まれた時に世界市民として登録された者のみに与えられた。つまりそれが無い者はパンを買う事すら出来ないのである。  婚姻と家族制度は崩壊し、支配層のみが人工授精により後継者を持てるものとなった。優秀な遺伝子は高値で売買され、またクローン技術による子孫の生産も盛んになった。それは支配層の中だけの話であり、放置された管理区域では人口調整のため、子を持つ事は禁止されているのである。しかし密かに子供を産む例は後を絶たず、生まれた子供達は未登録のためLTが無い。その人々は「ネームレス」と呼ばれ貧民街に溢れた。  言語は英語が世界共通語となり、各国の母国語の使用は禁止された。依然テレビ、インターネットが情報媒体であるが、それらは全て英語で配信されている。新聞という物は廃れて消えていた。英語以外の書籍の発行、情報の配信は厳しく禁止されたが、それでも母国語は代々伝えられている現状があり、完全な廃絶にはまだ期間を要すると見られている。    そして全ての宗教は廃止された。『神は他にあらず。それは人類の創造主ネフィリムのみである』という教えのもと、ネフィリム信仰を唯一強制された。その化身とされるヘビは崇められる存在となっている。ここに至るまで支配層が煽り立てて出資した宗教戦争は実に60年間も続き、それは人口削減の一役を担った。
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