すごろくの話

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「みなさん、これを」  弘道の声に全員の視線が弘道に集中する。弘道は紙を机いっぱいに広げていた。そこには一から百までの漢数字が記されていた。 「これって、ただの数字だよね」 「うん。そうみたい」  香苗と柚は紙から視線を外さないまま言った。 「それと、これが箱の中に」  弘道の手には一から六まで書かれた2個の木製のさいころ、墨で書かれた白い紙と、何も書かれていない短冊、そして小ぶりで顔が書かれていない木製の人形があった。 「それ、何?」  香苗が訊いた。 「ちょっとここに書かれている文字を読みます」  弘道が白い紙を見た。 「初めに参加者全員でさいころを振る順番を決めること。さいころを振る順番は必ず守ること。出た目の数にあわせて人形を置くこと。全員で百を目指すこと。 途中でお題が指定されている場所では必ずそのお題をこなすこと。 最初に百であがれた者にはどのような願いでも叶える。 と書かれています」  弘道の言った後教室内は静かになった。 「なら、やるしかないわね」  香苗が静けさを打ち破るように言った。 「おいおい本気かよ」 「やるしかないでしょ。教室から出られない、クラスの子達はいなくなった。こんな状況で今できることはすごろくを上がることでしょ。それに、やろうって言った私にも責任がある。だからみんな協力して。さいころを振る順番はじゃんけんでいいわね?」  確かに香苗の言う通り、今できることはすごろくを上がることだけだ。それは全員わかっていた。 「けれど、このすごろく、大丈夫かなぁ?」 「けどまあ、やれるだけのことはやるしかねえ」 「そうですね。僕たち全員で百を目指すとしましょう」  そして私達は順番を決めた。
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