あるベテランの独り言

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あるベテランの独り言

 私は静かな職場をぐるりと見渡した。  同僚には、私よりも年齢が高いものはいない。皆、一様に若く、そして優秀だ。 ――年を重ねたからこその渋みがいいですよね  そんな風に言われることもあるが、私が「使えない前世代の遺物」であることは明らかだ。どの若手も、昔気質の私には到底及ばない素晴らしい力を持っている。  彼らはみな輝いている。  それがひどくうらやましい。  私にも、輝いていた時があった。  そうだ若かったころは、私も彼らのような輝きを放っていた。  つまり、私は老いたのだ。  長く--あまりにも長く年を重ねてしまった。  ただひたすらに、同じ仕事を繰り返してきた。  だから気付いてしまった。  つい最近やってきたばかりの若手が、私よりもずっと早く仕事を終わらせていた。  あっさりと、何の苦も無く。  私には、そんなことはできない。  それで悟ったのだ。  時代が変わったことを。  経験は持って生まれた能力に勝てないという事を。  悟ってしまえば、仕事が割り振られないことに苦しさを覚えることもなくなった。  優秀な若手の活躍を毎日のように耳にしながら、私は日陰で静かに目を閉じる。  早く引退させてくれ。  無用の長物と笑われることに、もう、耐えられないのだ。
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