百夜通い

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「もうそろそろ飽きてきただろう?」 通い始めてから三十と四日を過ぎた頃、タバコの煙を吐きながら彼が言った。 部屋には私と彼しかいないのだから、必然的に先ほどの言葉は私に向けられたものだろう。 彼はタバコの灰を器用に振るい落とし、短くなったそれをもう一度口に咥えた。 タバコの吸い殻で、灰皿には小さい山ができている。 その煙の臭いは好きじゃないと私がどれだけ文句を言っても、結局彼がタバコを止めることはなかったな、と思う。それが悔しくて、私は少しムッとしてしまう。 そんな私を一瞥して、彼はニヤリと鼻で笑った。 「嫌なら来なくていいんだぜ?」 ふーっと、肺に溜め込んだ煙を顔に吹きかけられた。 ……。ふふふ、残念。 実はそういう頑固なところも好きなのだ。 私は黙って机の灰皿を蹴り落とした。
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