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それからさらに三十日が経っても、変わらず私は彼のもとを訪れた。
しかし、あの日から彼が私を部屋に招き入れたことはない。姿さえ見せてくれない。
この窓の内側には日除けの布が掛かっており、かろうじて漏れる蝋燭の火の灯りだけが彼の存在を教えてくれた。
私は今日も窓をコンコンと叩く。
鍵は閉まっていないけれど、それでも私は彼が招いてくれるまでは中に入れないのだ。
ねえ、そこに居るんでしょう?
今日は魚を持ってきたんだ。あなたは放っておくとろくに食事もとらないで文字ばかり書いているから。心配しているの。
中から返事はない。
窓際では昨日持ってきたイタチの死骸が、烏につつかれて無様に骨を晒していた。
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