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プロローグ
「れおんくんは、大きくなったらだれのコイビトになるん」
公園で砂いじりをしていた時、一緒に遊んでいた女の子が唐突に言った。まだ俺が大きなランドセルを背負って、何の躊躇もなくミミズやバッタなどを素手で掴んでいた頃の話だ。
「そうなあ、たぶん、コウスケかユウタのどっちかかな」
何故それほど親しくもなかった二人の名前を挙げたのか、それは未だに分からない。だけど俺は自分が男であることを自覚しながら、当然のように「だれのコイビトになるか」についての返事に男の名前を挙げていた。
幼いながらもぼんやりと理解していたのだ。自分は女の子よりも男の子が好きで、将来はきっと好きな男と結ばれるのだと。
成長するにつれて流石に何か妙だと思い始め、思春期を迎えた頃には真剣に悩みもした。いくら悩んでも解決することのない悩みだ。クラスメイトが彼女やアイドルの話をする中で一人疎外感を抱きながら、結局、親友と呼べるような友人も出来ずに学生時代という青春を終えてしまった。
色々と吹っ切れたのは高校を卒業して、初めて自分のパソコンというものを手に入れてからだ。ネットを通じて自分と同じ性癖の男子が大勢いることを知り、また、それを隠さずに人生を謳歌している人達がいることも知った。男同士で付き合っている人達もいれば、外国で結婚したという人達もいた。俺は本名も分からない大勢の「同志たち」によって自分というものを理解し、受け入れることができたのだ。
男が男を好きになってもいいんだ。俺だけじゃないんだ。
理解して、そこから多分、色々と屈折して行った。
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