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アイスを口にくわえ、空いた両手でスマホを渡しにかざして見せる。画面いっぱいに女性の顔が大写しで表示されていた。
透き通るような白い肌、ぱっちりと黒いつぶらな瞳、つやつやで乱れのないロングヘアー。お人形さんのよう、だけど、
「加工しすぎ……」
明らかに肌も目も、写真加工アプリで編集されている。ひょっとしたら輪郭も。
「かわいーよな? な?」
私の言葉を無視する弟。
「大学生? どこで知り合ったの?」
「んー、短大生。出会い系アプリ」
バーチャルで知り合ったらしい。
「こわー。あんた、そっちの方がよっぽど、どうかと思うよ。写真もプロフィールも、信頼性低すぎじゃん」
「姉ちゃん、頭固いよ。現実の合コンだって、本当のこというヤツいねえじゃん。女子なんてリアルでも化粧で顔加工してるしさ。今度、この子と海行く約束してんだぜ。ほんとに写真とかけ離れた容姿なら、会おうって持ちかけてきたりしないだろ」
「実際会ってみて、別人だったらどうすんの」
弟は、アイスをひと舐めし、くるりと目玉を動かした。
「やっぱり最後は中身だしなあ。優しい子なら、普通に付き合うよ」
「写真の偽装は不問に付すの?」
「目に見えるものだけで判断できないのがこの世の中なのだよ」
ハッハッハ、と朔太郎は何かいいこと言った風に高笑いをして立ち去った。
目に見えるものだけで判断できない。
それは確かに真理だけど。
「でも、やっぱり可愛いと思われたい……」
くうう。
伊織さんが女性を見た目でジャッジするわけないと思ってはいても、明日後悔したくない。
新しい服を買おうにも、すでにデパートはしまっているからなんとか、この中から見繕わないと。
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