謎解き葬儀屋 イオリの事件簿

５．心のかたち

　野菜ならスーパーでも結構安いと思うけど？　私もチラシを受け取ってみる。すると、ナスやニンジン、タマネギなどが、詰め放題で100円、朝採れトマトが5個で100円、と破格の値段だ。

「野菜が人気なのはうちも同じなんですよ。要チェックなのは、これです」

　伊織さんは玄関ホールの端に移動し、声を潜める。きれいな指先が示す先を覗き込むと、終活セミナー、とある。他にも、ものまね芸人のステージやハンドマッサージとネイルのコーナー、フリマや人形供養、なんていうコーナーまである。
　ひんやりとしたエアコンがほてった体に気持ちよく、ついふっと緊張が解けて、いつもより近くに顔を寄せていた。いけない、通常の距離を保たなくては。
　すっと一歩離れると、それに気づいた伊織さんが、ハンカチを出してこめかみの汗を押さえた。

「すみません、汗臭いですよね？」

「いえ、違うんです、私のほうこそ」

「え、西宮さんが？　それは全く！　むしろ」

「え？」

　むしろ？

「いえ、なんでもありません……とりあえず全部回ってみようと思います」

　反応してはいけなかったらしい……伊織さんは顔をそむけてしまった。