3.受け継がれし道

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 『あいつ』って言った……伊織さんのこと。相当、親し気だ。  こういう嫌な予感は当たる。経験上、女子トークから漏れ聞こえる人間関係は、想定以上だったりする。  しばしの衝撃のあと、なんだか、身体を先端から切り刻まれるような気分になっていく。  明るくて、セクシーで、お花が似合う美人の彼女。  伊織さんにぴったりすぎるよ。  それに……万里江ちゃんの向日葵の咲く時期も、ブロッコリーの花言葉も、生花担当の彼女が伊織さんの推理を助けていてもおかしくない。  これから仕事だというのに、頭がぼうっとしてくる。胸も……痛い。  そこへ、コホン、と咳払いが。  本堂の入り口に、伊織さんが立ち、その後ろに礼装スーツを来た男性がふたり。   「紫藤さん、宜しいですか。喪主様とご次男様に、お花の並び順を確認していただきます」  きっと今の会話を聞いていたのだろう。いつもより表情が険しい伊織さん。  私に黙礼すると、すっと喪主様たちの後ろについた。  ちょっと怒っているようにも見える。 「さ、私たちは受付の準備をしましょ。カバンもそこに置けるから」  藤原さんに促され、本堂を後にした。
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