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なんとなく気まずくて、それから二人の口数は少なくなった。
日が暮れてきている。アパートがある街の中心部にはすっかり電灯が普及しているが、球場がある町外れは、ガス灯がぽつぽつと立っている程度で、日暮れと共に暗くなるのだ。
早く帰らなければ、という意識が働いたのか、どちらからともなく歩を速めた。人気のない石畳の道に二人の足音がやけに響く。
そして、程なくしてアパートに着いた。
共同の玄関を入ると、弥彦は「明日は月曜日だ。寝坊するなよ」と言って賢斗には有無を言わせぬといったように自室に入ってしまった。
賢斗も自室に戻った。
ベッド、机、洋服箪笥といった最低限の家具しかなかったが、レンガ造りの壁は趣があり、賢斗はこの部屋を気に入っていた。
ベッドにごろんと寝転ぶと、ぼんやりと先ほどの弥彦の台詞を思い出した。
弥彦が、なぜああいうことを言ったのか。
賢斗は気になって仕方がなかった。
ああ言われると、むしろやってやる、という思いが強くなる。
翌日から賢斗は仲間集めに奔走した。
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