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一ヶ月後。
賢斗は、弥彦の部屋のドアをドンドンと叩いた。
「弥彦!起きて!」
しばらく叩いていると、ガチャリとドアが開き、眠い目をこすりながら弥彦が出てきた。
「なんだよ賢斗。こんな朝早くから……」
「ちょっと、一緒に来て欲しいところがあるんだ」
賢斗が弥彦を連れてきたのは、小さな野球場だった。
何が何だかわからない、という顔をした弥彦に、賢斗はにんまりと笑ってみせた。
「弥彦、今から野球やるぞ」
「はっ?」
「大丈夫。ユニフォームや道具は用意してあるから」
「そういう問題じゃない。この前も言っただろう。勝てるはずが」
「確かにアメリカはスポーツの、野球の進んだ国だ。負けたとしても、日本人が一矢報いたっていうのもいいもんだろ?」
その言葉を聞き、弥彦は、ふっ、と笑った。
「どうしたんだよ?」
「いや、前に、似たようなことを言った友人がいてな」
今度は賢斗の方が何がなんだかわからない、といった顔をしたが、弥彦はニカッと笑うと、「わかった。やってやろうじゃないか」と同意してくれた。
なんだかんだで、参加メンバーは二十人程集まっていた。これなら二チームに別れても、休憩や交替を挟みつつメンバーを回せる。
営業部(Associate)と、経理部(Bookkeeper)の社員が多かったことから、頭文字を取ってAとBのチームに分かれた。
賢斗と弥彦は、共にBのチームに入った。
一回裏。Bチームの攻撃。
最初にバットを振るったのは、賢斗だった。
が、全くボールに当たらず空振り三振。あっと言う間にアウトが一つついてしまった。
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