ソープランドにて

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ソープランドにて

 奈美にとってスパダリはイケメンである上に経済力のある男だった・・・その所以から秀一は改めて、「概して見てくれの良い女程、利に喩るものだ」と肌で感じるも、「だからと言って醜い女程、義に喩る訳でも性格が良い訳でも無い。寧ろ醜い女程、賤しめられて育っているから妬み深く拗けていて性格が悪い。仮令、世間的に性格が良いと言われている女であっても頭が弱いだけの話で俺を思いやれるキャパシティーは毫末も無い」とも普段から肌で感じているので見てくれが良くなければ、女に価値を見出せないのであるが、謂わば、価値の有る女に惚れてアタックして痛い目に遭い最早、価値の有る女をゲット出来ない身の上である事を悟ったのだから爾来、人間関係に於いて男のみならず女に対してもネガティブになり、人間との接触を少しでも避けようとするに至った。  而してネガティブ思考が高じる中で派遣社員なら慰安旅行とか忘年会とか、そういった煩わしい付き合いが無くて少しは気楽かなという安直な考えが芽生えて来て此の儘、正社員で行くべきか、それとも派遣社員になるべきかと商量する内に到頭、社内での人間関係に行き詰まって正社員として勤めていた会社を敢えて辞め、派遣社員として或る樹脂原料製造工場で働くことになった。
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