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秀一はいつまで経っても青年の様な自分の粗忽な振る舞いを女が笑った事に気づくと、面映ゆくなって、「ちょっと買い過ぎですね」と答えるや、今度は慌てて商品を棚に戻し始めたものだから女は猶も可笑しくなって笑い続けた。
秀一は亦、滑稽を演じてしまったと恥じたが、どんな理由であるにせよ、こんな魅力的な女が自分の行為に因って喜んでくれている事実に有頂天になり、これは確かにチャンスが訪れたと思ったから、「いやあ、一体、僕は何をしてるんだろうなあ」と言って後頭部に手を遣って照れ笑いして見せ、依然、女を笑わした儘、女に立ち入ろうと、「あのー、ところで今日はお独りで見えたんですか?」
「ええ」
秀一は一先ず立ち入り成功とときめいた。が、正対してしっかり女を見たら、いやあ、こんな奮い付きたくなる様ないい女に彼氏がいない筈はないと思った。だから同じ失敗を繰り返すまいと、まずは探りを入れる事にした。
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