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秀一は願ったり適ったりとときめいて、「でしたら、どうです。今から、あの、お話だけでもしませんか?」
勿論、彼は場当たり的に言っているのであって何を話そうという具体的な考えは無かった。
「えっ、お話?」
「ええ、ですから、あの、良かったら喫茶店にでも行って少しお付き合いを願いたいと・・・」
「えーと、どうしようかしら・・・」
「ここは一つ試しにどうですか?」
「んー」
「ちょっとだけで良いんですよ」
「そうですねえ・・・」
「どうですか?」
「んー」
「どうですか?」と秀一は垂涎の的となった女にこの後も必死に食い下がった。
「んー」と女は然も迷っている態度を維持していたが、彼の色白の顔が蒼褪めて来ると、悦に入って、「分かりました。それ程、おっしゃるなら」
女は端から断る気は無かったのだが、態と焦らして彼の困る様子を楽しんでいたのである。方や、秀一は何はともあれ第一関門を突破したと思ったから、「ああ、良かった」と安堵すると、途端に顔色に赤みが差して笑顔が戻った。
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