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秀一はその笑顔の中にリサイクル&ディスカウントショップを出る前に自分のロードスターを見た時の女の笑顔が示した冷たい物と同じ物を感じた。それで自ら招いた事とは言え、降って湧いた様なチャンスに喫茶店に着く前まではわくわくする気持ちも有ったが、そんな気持ちは萎れてしまい危惧の念に駆られた。けれども行き掛かり上、引くに引けない彼は、「乗り掛かった舟だ。やってみるしかない」と思い、兎にも角にも先頭切って店内に入って行き、ヘリンボーンの床をつかつかと歩んで奥の方の空いている所まで行くと、木枠格子がアンティークな雰囲気を醸し出すダブルハングの窓際の席を指差して、「ここにしますか」と言って女を頷かせ、西洋チックな木製のチェアに座らせた後、やれやれ何とかここまで漕ぎ着けたかと思い、鮮やかな木目がプリントされたテーブル越しに、はあと息を吐きつつ腰掛けた。
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