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そんな彼の虚ろな目を奈美はしっかり見た儘、先程から表情に示しつつあった嘲弄の色を濃くして行きながら続けざまに皮肉った。「でも、それなら会社でも気楽だし、今は独身貴族としてそれなりに楽しんでる訳ね。」
この失礼極まる嫌味ったらしい言い回しに秀一はいい女に馬鹿にされるしかない自分の身の上を骨身に沁みて感じて自虐的になり、「いやあ、それが腰弁って奴で全然、給料が良くないんで・・・」
「えー、そんな事ないでしょう。長く勤めてるんじゃないの?」
「いや、それがまだ二年位なんで・・・」
「あら、そうなんだ・・・」
奈美はそう言うと柳眉を顰め、瑞々しい唇を歪めた。秀一は益々決まりが悪くなったので話頭を転じた。
「あのー、綺麗なペンダントですね」
「あっ、これ?」と奈美はペンダントを指差したなり冠を曲げ、「金運がアップするって聞いたから買ったんだけど、やっぱり安物は駄目ね。まるで効き目無しよ」
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