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秀一は先に立ち去る積もりが先に立ち去られてしまい、追っ掛けるのも可笑しな話だし追っ掛けた所でどうなるもんでもないから、「勝手に払うが良いさ、恩に着るぜ。なんちって」と呟くと、中腰の体勢から椅子にへたり込んでしまった。「全く凄い女と出会ってしまい全く凄い女にアタックしてしまったものだ。それにしても凄艶な女だった。けれども、頭の中は俗も俗だ。それを僕は美貌に現を抜かした許りに見抜くのが遅れてしまって馬鹿を見た訳だ・・・」
彼はそう独りでぶつぶつ愚痴を零し自分の馬鹿さ加減に二の句が継げなくなると、色々の屈辱の反動から可笑しくなって、「ヒヒヒヒ!ハハハハ!」とヒステリックに笑った。その後、人の視線を感じると、居直って蛮勇を奮い、何だ、何、見てやがんだ!と言わんばかりに辺りを見回して周囲の視線を同伴者に向けさせる代わりに周囲のひそひそ話を誘発させて奈美の残したアイスコーヒーとおまけを恨めしそうに見つめつつ思った。「誰が食うか。あの下等な女が支払ったものを。武士は食わねど高楊枝」
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