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「みんなで協力してここを脱出する方法を考えようぜ!」 シザースに変身していた奴が言う。 二人も首肯しているあたり、“今の”此奴等(こいつら)の言葉は本心に近い。だが、また極限状態に陥れば仲間割(デッドオアアライブ)れの果てに哀れに死滅していくのだろう。 よほど疲れたのか、この廃墟で彼らは仮眠を摂ることにしたらしい。 一応一人が見張りに立つ交代制を考えただけまだ お脳がお花畑というわけではなさそうだが。 「…見張りの意味がないだろう」 こちらがこっそり出て行ったのもまるで気づかず、寝ずの番をしている石田という先程インぺラーに変身していた男。 他の二人は間抜け面を晒して眠っている。 それを見届けると私はとある場所と交信を開始する。通常の電子機器は機能を成さないが、組織の技術とは恐ろしいもので支給されたデバイスは、鏡面世界(ミラーワールド)でも問題なく機能していた。 「ひとつのグループと接触した。どうする?様子見か?それとも…」 『------------』 交信先の主もよほど鬱憤(フラストレーション)蓄積(たま)っていたのか私のシナリオよりもエグい提案をしてきた。 「了解した。貴方も随分苛々していたんだな」 ほくそ笑む私の声色に向こうも苦笑した。 交信を切断すると、私も汚れた毛布に身を包む。 戻ってきたことにも気づかない石田。…番などせずに寝ればいいのに。無意味な行為ほど、このシリアスな場面で見ていて滑稽なものはない。 「…ま、明日は精々踊ってもらうさ」 つぶやいた言葉は、番人(石田)の耳には届かず虚空に消えた。
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