おじいちゃん 1 

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おじいちゃん 1 

 僕は何から先にしたら良いかすっかり分からなくなって、しばらく部屋の中をうろうろと歩きまわって、それから急に、そうだ、これは直接知らせてやらなければ、とあわててフォンをタップした。 「ハイ、ジョー、ひさしぶり」  ミックの大声が更に続ける。 「どうしたんだ? 財団へのこないだの融資の件で、何かあったの? 別件? あ、そう言えば彼、お見舞いの花とても喜んでたよ、こっちからの手紙は受け取ったんだろう? 返事がないって彼ずっと……」 「相変わらず早とちりだな、おじいちゃん。メールで返事したのに。しかも返信も、もらっているよ。それよか今、彼はいる? 話ができる?」 「コーチ?」  ははっ、と彼は明るく笑って「西海岸までドライブに行ってる、って言ったらどうする?」  答える前に、ミックが部屋を横切って、彼のベッドまで行った様子がうかがえた。 「可愛い孫からだよ」と言っているようだ。しばらくごそごそと音がしてから、ようやく 「よお」  耳慣れた、優しい声が響いた。「譲、元気か」  逸る心を押さえながら、僕はいきなり本題に入った。 「見つかったよ」 「えっ?」  彼はすぐに、何のことか判ったようだ。そりゃそうだ。  百歳に近づくまでずっとずっと、ひとつきり心に留めていたことだったから。 「そう、あの金ボタンが」
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