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 田代と横溝が話かけてきてくれてから数人と会話をすることができた。 「どこから来たの?」 「何が有名?」 「趣味や特技は?」 「前の学校はどんなところ?」 誰も僕の事を知らないのだから質問攻めになるのは理解しようと思うが、本当にそんなことが知りたいのか、反対に自分が聞かれて困る質問だと分からないのだろうかなどと考えてしまうと少しずつ声をかけてきてくれる人も減っていった。  田代と横溝は特に僕に興味があるわけでもないらしく、ハマっている漫画やゲームを勧められたくらいだった。 気を使われているのかもしれないと思って二人に僕の事何か聞きたくないのか尋ねてみたら田代には「聞いて分かる事なんてたかが知れている」と言われたし、横溝には「話したいことがあったら自分から話して。無理に聞き出すのは好きじゃないんだ。」と言われた。  もちろん気を使って話題を持ち出していろいろ質問してきてくれたクラスメイト達に感謝の気持ちはあるが、二人のように無理に馴染もうとしなくても良いと思われている事の方が嬉しかった。    数日間二人と過ごしてきて性格がわかってきた。 まず田代は童顔で身長も低い。可愛いと言われることが嫌で言葉遣いを荒くしていたら口も悪くなったと言っていたが本当かは分からない。 調子に乗りやすい性格なのかクラスメイトから持ち上げられると面倒な仕事でも引き受けてしまうらしい。 可愛らしい外見からか他クラスの女子からは好意を持たれやすいそうだが本人は全く興味がないらしい。 同じクラスの女子は田代の性格を知っているため眺めているのが一番だという話を聞いた。  横溝は眼鏡で高身長。一見クールに見えるが特に何も考えていないことが多いようだ。 二人の出会いは知らないが一緒にいることが多く田代が引き受けた仕事の手伝いをしているところをよく見る。 二人と一緒にいるのが心地よくて一緒に行動することが増えたのだが横溝は田代の言った言葉を要約してくれたりフォローをしてくれることが多い。 こういうと田代の世話係のようだが僕に話題を振ってくれたり、話しやすい空気を作ってくれたりと意外に気を使ってくれている。 寝坊したり忘れ物したり、話を聞いてなかったりと田代の言っていた通りのぬけている要素も取り入れている。  それにひきかえ僕は平凡。趣味や特技は考えに考えてありきたりなもの。 前の学校で部活をしていたけどそれも辞めた。 バイトもせずに家に帰ってからはテレビを見るか漫画やゲームで時間をつぶすか。 前までの自分が嫌で転校を機に新しい自分になる予定だったのだが16年生きてきた性格を数日で変えることはできなかった。  まだ知らないことばかりの学校も友達も自分の居心地のいい場所になるように努力したい。
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