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百葉箱
「初めて花葉書を作ってみました」
一行書いてためつすがめつ。
転校していった彼にもう何通目になるのか数えるのも大変な葉書。
「メールが有るのに」
言う彼の言葉も聴かず、私は葉書を出し続ける。
筆不精な彼が返事の葉書を寄越すまで、私は彼からのメールに返事しない。
始めは不機嫌になった彼も、メールの度に葉書で返事する私に態度が変わって来た。
「はがき代だって馬鹿にならないのに」
久しぶりに会った彼は言った。
「どうしても直ぐに返事が必要な時はちゃんとメールするからさ、、、」
苦笑した彼はそれ以来葉書に文句は言わない。
それどころか真新しい葉書の束を郵送してくる始末。
時にはどこで手に入れたものか、綺麗な景色の絵葉書も。
初めて作る花葉書の粘着シートに、拾ってきた楓の押し花を載せて悦に入る。
例え返事を貰えるのが遅くても。
返事を待つ間のときめきわかりますか?
想いを巡らすときめきわかりますか?
不安を抱えるもどかしさが愛おしい事。
今か今日かと心待ち。
郵便受けを覗くワクワク。
「彼も同じ気持ちで居てくれるんだろうか」
一言呟いて私は一葉を赤い百葉箱に届けに行く。
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