放浪カレシ

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最初、駅で見かけた時から辰巳さんに一目惚れしてしまったのだ。 でなければ声を掛けたり家に招くなんて危ないこと、しなかった。 辰巳さんはとてもいい人だった。 一緒にいた三日間の間、私たちに(やま)しいことなんてなかったし、お金だって次に連絡が来て逢った時にちゃんと返してもらった。 だけど私がそれだけで終わりにしたくなかった。 別れる間際にまたお金を渡して次に繋げようとしていた。 それが今でも続いているのだ。 最初辰巳さんはお金を受け取ることを拒んでいたけれど、思い切って『好きだから少しでも役に立ちたいんです!』と辰巳さんに告白して無理やり受け取らせた。 その時は明確な告白の返事はもらえなかったけれど、三回目に逢った時、辰巳さんから『俺も杏子ちゃんが好きだ』と告白された。 両想いになった瞬間、私は辰巳さんと結ばれた。 結ばれてからもなんとなく辰巳さんにお金を渡すのを止められないでいた。 それは心の奥底で(お金を渡さなかったら辰巳さんはもう私の元には来てくれないのかもしれない)という気弱な気持ちがあるからなのかも知れない。 辰巳さんは自身のことをあまり話さない。 それは何故かと思ったこともあるけれど、根掘り葉掘り訊いてしまって嫌われるのが怖いという弱い心のせいで強く訊くことが出来ないでいた。
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