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目をこすりながら、再び下を見ると誰かが私に手を振っているのが見えた。
健太郎くんだ!
健太郎くんが私に向かって懸命に手を振っているのだ。
『健太郎くーん』
私は嬉しくなり両手を大きく振って、自分の中で最高の笑顔で返した。
気付くと、にわとりが私の目の前にいた。
にわとりは、くるりと後ろを向くと、卵を生むような体制になった。
「ここで産むの!?」
私は急いで、両手で卵を受け止めた。
虹色の卵は無事に私の手のひらに落ちて、ぱかっと割れた。
さっきと同じように、中には紙が入っていた。
《パンツ、丸見えなので、とりあえず隠したほうがよろしいかと》
私は、パンツ丸見えのまま健太郎くんに手を振っていたんだ。
すばやく、足を閉じて、目も閉じた。
そして考えた。
きっと大丈夫。
健太郎くんは、凡人とは違う。
私ごときのパンツに動揺したり、バカにするような人じゃないはず。
そっと下を見ると、健太郎くんは変わらず嬉しそうに手を振っていた。
やはり、健太郎くんは健太郎くんだった。健太郎くんにとって、私が空を飛んでいることも、パンツが見えていることも大したことではないのだろう。
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